保護したときわずか400グラムだった子猫は、19年5カ月も生きた「親孝行な子」 家族をとことん愛してくれた

古川 諭香 古川 諭香

忘れられない特別な猫と暮らせた思い出は、いつまでも胸の中に残っているもの。19歳5カ月のニャン生を全うした辰之助くんは、たつにゃんままさんにとって、そんな愛猫。一緒に暮らせた日々は、飼い主さんの中で何にも代えがたい宝物になっています。

旦那さんが保護した400グラムの小さな命

出会いは、2002年8月上旬のこと。職場から帰宅しようと車を走らせていた飼い主さんの旦那さんは1匹の子猫を発見。この猫こそが、辰之助くんでした。

実は旦那さん、前日にも同じような場所で黒猫と遭遇し、保護しようと奮闘。しかし、子猫は元気いっぱいだったため、捕獲はできず…。諦めきれなかった旦那さんは帰宅後、飼い主さんに「猫、飼ってもいい?」と尋ねていたのだそう。

「私は猫を飼ったことがありませんでしたが、いいよと言いました。そしたら、翌日、辰さんを拾って帰ってきたんです。まっすぐ歩けないほど衰弱していたため、すぐに捕獲ができたようでした」

当時、辰之助くんはノミだらけ。体重は、わずか400グラム。しかし、警戒心は強く、飼い主さん夫婦にシャーと威嚇。本ニャンとしては精いっぱいの反抗ですが、小さな体から発せられる、その威嚇は微笑ましいものでした。

飼い主さん夫婦は動物病院へ連れていき、ノミや寄生虫の駆除をしてもらうことに。

「ただ、当時は子猫用にも使えるフロントラインスプレーのようなノミ駆除アイテムがなかったので、最初にかかった先生には薬では落とせないと言われたので、違う病院へ。2軒目の病院では、対処してもらえました」

2軒目の病院では、辰之助くんの本当の年齢も明らかに。

「初めの先生には生後1カ月程度だと言われていたんですが、すでに歯が伸びていたことから、2軒目の病院の先生には『栄養状態が悪く、体重少なかっただけで生後2カ月以上は経っているはず』と言われました」

幸いなことに、辰之助くんは血液検査をしても異常はなく、ノミや寄生虫を駆除しながらご飯をしっかり食べさせているうちに、どんどん元気に。その背景には、旦那さんの辰之助くん愛もあったようです。

保護した頃、旦那さんは繁忙期で忙殺されていましたが、昼休みには片道20分の職場から帰宅し、1時間半ある休憩を、すべて辰之助くんのお世話に費やしていたのだとか。

「私は朝出て夕方帰宅する勤務形態だったので、旦那よりは長く一緒にいられました。旦那さん、ようやるなあと思っていました(笑)」

同居猫たちのお世話をする“兄貴にゃんこ”に成長

そうした飼い主さん夫婦の愛情が心に届き、威嚇をしていた辰之助くんはゴロゴロと喉を鳴らして甘えるように。

活発にもなる辰之助くんの姿を受け、旦那さんは、家にひとりでいる時に2階へ上がって怪我をしないようにと柵を手作り。しかし、辰之助くんは軽々と柵を乗り越え、誇らしそうにしていたそう。

「帰宅すると毎日、『僕飛べるよ』と自慢げに乗り越えてくれました。結局、柵は2mもの高さになり、捨てる時に私が苦労しました(笑)」

辰之助くんが4歳になる頃、家庭内に変化が。飼い主さんの勤務先で生まれた子猫・ふうちゃんが家族の仲間入りを果たしたのです。

初対面は、ふうちゃんのノミや寄生虫の駆除が済んだ後でしたが、辰之助くんは隔離中、すでに他猫がいる気配を察していたようで、ふうちゃんと会わせると、あっという間に甲斐甲斐しく面倒をみるようになりました。

その後、茶とらんくんも家族に加わり、飼い主さん宅はより賑やかに。

その時も辰之助くんは、積極的にお世話。10歳を過ぎ、生後1~2カ月の美咲ちゃんや乳飲み子のまおちゃんがやってきた時も、貫禄ある兄貴として子猫の面倒をみてくれました。

そんな辰之助くんは、旦那さんがバイクのヘルメットを被ったまま家に帰ってきた時には激しく威嚇。ヘルメットを外した途端、キョトンとする姿を見て、飼い主さんは「うちを守る家長だな」と思ったのだとか。

「ただ、私一筋で甘えっ子なところは、ずっと変わりませんでしたね。帰宅すると、必ず床でくねくねして出迎えてくれました」

辰之助くんが10歳を過ぎた頃、飼い主さんは義父母の介護や、フラワーデザインの団体での役員業務を任せられ、毎日が忙しくなったそう。しかし、辰之助くんが支えてくれているように感じ、きつい日常を乗り越えることができました。

心の拠りどころでもある辰之助くんに長生きしてもらうため、飼い主さんは年に1回は健康診断を受けさせたり、食が細いことを気遣ってフードをこまめにあげたりするなどの配慮をしていたそう。

しかし、辰之助くんが19年も生きてくれたのには別の理由があったのではないかと考えています。

「辰さんは、神様から寿命を19年ちょっと貰っていたのかも。介護や役員の仕事が済んで数年間、元気で生きてくれたので、介護や看取りができた。親孝行な子でした」

家長や同居猫たちの兄貴として、家族をとことん愛した辰之助くん。その存在や一緒に暮らした思い出は、今でも飼い主さんにとって大きな心の支えになっています。

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