東日本大震災から12年 福島の原発事故周辺に赴き今も続ける猫のTNR活動 ボランティアに思いを聞いた

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「福島TNR活動初日。Aさんと合流して夕方から活動開始。今回は楢葉町に6台と広野町に4台の捕獲器をかけ朝まで待機。今回の広野町の現場は凄い絶景ですよ」

2011年3月11日に発生した東日本大震災から12年。東京を拠点に動物愛護ボランティアとして活動中の高沢守さんは、今も月1回東京から赴いて福島県の原発事故が起きた周辺で猫のTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻すこと)活動に取り組んでいます。

活動エリアで「地域猫」が2日間捕獲器に閉じ込められる 虐待か?

今年1月ごろには、猫に対する虐待かと疑われるような出来事が福島の活動エリアで発生。それは、高沢さんが過去にTNRをした地域猫が2日間にわたり捕獲器に閉じ込められていたといいます。

「捕獲器が仕掛けられていたところは、私が以前20匹くらいの猫ちゃんたちをTNRをした場所です。今は地域猫として見守られ、あるご夫婦がいつもご飯をあげてくださっています。そのご夫婦から連絡がありました。公衆トイレの裏に捕獲器が仕掛けてあって、1匹の地域猫が閉じ込められていたとのこと。その地域猫はほぼ毎日決まった時間にご飯をもらいにくる子でした。

2日間ほど姿を現さずご夫婦が心配になって、付近を探したところ捕獲器を見つけたそうです。捕獲器を開けたところ、猫ちゃんがものすごい勢いで逃げて行ったと聞きました。逃げられるくらいだから衰弱はしていなかったようです」

さらに今回の捕獲器について、高沢さんはボランティアではない人物が仕掛けた可能性が高いと訴えます。

「ボランティアが捕獲器を仕掛けたら、近くに待機していることが多いです。その場を離れる際は捕獲器に連絡先を書いておくことがほとんどですし、一切そういうこともなく、長時間放置したままですから明らかにボランティアではない誰かが仕掛けたと思います。猫が苦手な方が捕まえて処分しようと思ったのかもしれません。

これまで福島被災地で捕獲器を仕掛けられて閉じ込められるという事例はなかったので心配です。他の地域では捕獲器で捕まえて餓死させる悪質なケースもありましたから。こうした事案が起きないように、お外の猫ちゃんたちに対するクレームが役場などに入ったときには、私が直接その方のご自宅まで出向いて地域猫として見守っていることを理解していただけるよう普段からお話させていただいておりますが…」

   ◇   ◇

月1回福島に足を運び、300匹近くの猫たちにTNRを実施

福島の原発事故周辺で暮らしている猫たち、また住民の人たちと、試行錯誤しながらもこれまで向き合い続けてきたという高沢さん。福島で猫のTNR活動を本格的に始めてから今年で10年ほどとのこと。東日本大震災が発生して福島で原発事故が起き、原発周辺に住む人たちが避難される際に取り残された動物たちに当時心を痛めたといいます。そして震災後、初めて福島の被災地に足を踏み入れたときのことをこう振り返ります。

「いのししやいのぶたなどいろんな動物が町中を徘徊していました。猫の死骸が横たわっていたり、防護服を着た人間を見て驚いた犬たちが逃げ回ったり…動物たちの多くが人間におびえていたように感じました。被災地の光景を目の当たりにして、飼い猫や飼い犬としてかわいがられていた子たちがたとえ生き残っていたとしても、全ての子が飼い主のもとに戻ることは難しいだろうとショックを受けたことを記憶しています」

いまだに猫が増え続けるエリアも

避難指示が解除された後は、福島県の広野町や楢葉町などを中心に足を運んだという高沢さん。すると、地元に戻ってきた住民らが生き残っていた猫たちに餌付けをするようになり、猫の数が徐々に増えていったそうです。そこで、役場などと連携しながら猫たちのTNR活動を開始しました。

「東京から福島まで通いながらも300匹近くの猫たちにTNRを実施しています。直接住民の方からTNRの依頼がきたり、役場経由で連絡がきたりとさまざまです。活動に協力的な役場さんに関しては無料不妊手術事業を行っているどうぶつ基金にその無料チケットを申請してもらい、無償で不妊去勢手術を行うことができます。ですので、他のエリアよりも比較的TNRが進んで猫の数も少しずつ減ってきています。

一方で、役場さんの協力を得ていないところはTNRが進んでおらず、今も猫の数が増えているのが現状です。そういったエリアは手術費が自己負担で数をこなせないため、東京から赴いて月1回程度やっても増えてしまうといういたちごっこ。手伝ってくださるボランティアさんがいるものの、現地で中心に動いていただけるようなボランティアの方がいないので、正直限界を感じるときも。とはいえ、猫ちゃんたちを見捨てることはできないので…今後も地道に命をつなぐ活動を続けていきたいと思います」

現在、福島から保護した猫たちを含め5匹の元保護猫と暮らしているという高沢さん。現在、TNR活動などの支援も募っています。詳しくは、アメブロ「動物救援隊ー福島原発地域に残された命の活動」をご覧ください。

アメブロ「動物救援隊ー福島原発地域に残された命の活動」

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