昨年12月、都内の50代男性の枕元でスマートフォンが発火する事故がありました。男性はとっさにスマホを庭に放り投げ、自分で消火。スマホは焼損しました。
実はこの2日前、男性は通販で買った非純正バッテリーを使い、自分で交換作業をしたばかりでした。販売事業者に苦情を入れ、バッテリーの代金は返金されたものの、スマホ本体の補償には「応じない」の一点張り。相手は海外の事業者だったといいます。何回かやり取りするうちに連絡が取れなくなり、泣き寝入りするしかなくなってしまいました。
「ガラケーとは違う」
「スマホのバッテリーは、かつてのガラケーのように素人が簡単に取り外せるものではない」。東京都消費生活総合センターの担当者はそう強調します。同センターは1月、この男性からの相談を受け、自分で交換作業をせず、正規店に相談するよう促す注意喚起を行いました。スマホで使われるリチウムイオンバッテリーは、高温や衝撃に弱い性質があります。特に交換する際には、薄いバッテリーを所定の位置にはめ込み、端子を接続するといった細かい作業が必要となるといいます。
メーカーからすると「改造」
独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE)によると、2017~21年に起きた非純正バッテリーの事故 は134件。掃除機やパソコンなども含み、製品や周辺が焼けたといいます。19年以降の3年間は特に件数が増え、毎年家屋の全焼事故にまで発展するケースがありました。
本来、製品が原因で事故が発生した場合、製造物責任法に基づいて賠償などが行われます。しかし、非純正バッテリーを使うことは機器のメーカーからすれば「改造」に該当する場合があるため、損害に対応する義務はありません。非純正バッテリーを販売した事業者に責任を求めることはできますが、そういった事業者では、消費者から連絡するための情報すら不十分なケースも。電話番号の記載がなく連絡が取れなかったり、まともに対応してもらえなかったりします。今回スマホが発火した男性は、まさにこのケースにあたるでしょう。
iPhoneの交換値上げしたけれど…
3月1日から、iPhoneのバッテリー交換費用が3千円値上げされました(iPhone14シリーズより前の機種が対象)。iPhone 13~11、iPhone Xシリーズで12800円など、つい「安い非正規バッテリーを買おうか…」とも思ってしまう金額になってしまいましたが、安全のためにきちんと正規の手順で申し込みましょう。