即完売も今や珍しくない…人気が高まり続けるクッキー缶 ひとり用のご褒美化進む

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予約開始と同時に即完売するのも珍しくないほど、クッキー缶人気が高まってきている。大きな缶にいっぱい入って手土産に重宝され、家族で分け合って食べる大きなクッキー缶というイメージから、小さいかわいい缶に美しく詰められ、独占したくなる自分へのご褒美存在と変化しているのだ。

3月14日のホワイトデー前におこなわれる、関西での火付け役となった百貨店「阪急うめだ本店」(大阪市北区)の催事『クッキーの魅力』をはじめ、クッキー人気を後押しする人々に取材した。

関西で人気すぎる、クッキー催事

開店数分後に「完売しました!」とスタッフが言い続けたこともあったほど、人気を博している催事『クッキーの魅力』。現在は、行列しそうな商品に関しては、事前予約(今年分は完売)を取り入れ、行列を避けるためにオンラインでの販売も強化するようになっている。

今年で6回目を迎え、女性だけでなく、3月14日のホワイトデーのお返しを探す男性客も珍しくなく、売り上げも右肩上がりの同催事。今年は140ブランドを取り扱い、3月1日からスタートした。

初日は開店と同時に、お目当ての売り場へ向かう人々が続出。番組『マツコの知らない世界』にも登場したフードジャーナリスト中田ぷうさんと、猫モチーフのクッキーが入った人気の「NEKO LAB」とのコラボクッキー缶(2種各日販売予定数25個)をはじめ、数量限定のものが棚から次々と消えていく。

初めて訪れたという大阪市の40代女性は、「この催事を知らずに、会社への手土産を買いに来たのですが、すごい人で驚きました。かわいい缶(中田ぷうさんと「NEKO LAB)のコラボクッキー缶)だったので、これは自宅用に」と事前リサーチなしでも、直感でしっかり人気の品を入手。

また1回目から毎回訪れている京都市の40代女性は「クッキーは大好きで、他店の催事もすべてチェックしています。選ぶときは、可愛さと味を重視し、今回は事前にオンラインで購入して、今日はオンラインで買えない種類や、これまで買えなかったものをセレクトしました」と、今回の予算は2〜3万を想定しているとのこと。周囲の人たちのカゴ内のクッキーや、抱えている紙袋の数を見ると決して、その金額は珍しくないことが見てとれる。

なぜ、クッキー催事に挑戦を?

催事『クッキーの魅力』がはじまったのは2018年。雑誌や書籍でかわいいクッキー缶は紹介されていたが、当然ながら今ほど種類はそう多くなかった頃だった。今は「大丸京都店」「ジェイアール京都伊勢丹」などでもおこなわれるようになったが、「阪急うめだ本店」がクッキー催事の先駆けだ。

企画のきっかけとなったのは、同店で開催された、「あんこ」をテーマにした催事『時をかけるあん』の大ヒット。あえて和菓子ではなく、あんこにしぼったのが、人々の心をしっかりと掴んだ。

「洋菓子でも何かできないかという話になりました。既に時代性のある催事として「パンフェア」がある中、流行の兆しを見せていたのが「焼菓子」でした。そのころ、何かに特化した方がお客様の興味軸を捉えやすいということもあり、焼菓子の中でも、身近でありながら奥が深い商材である「クッキー」にスポットを当てました」と担当者の中塚比呂記さんは語る。

初回の1日目のオープン時は人気商品が瞬く間になくなっていき、そのときの様子を「全く想定外、とまでは申しませんが、想定をかなり上回る需要があったのは確かです。閉店時どころか夕方頃には商品が無く、ツイッターなどでは「覗いてはみたものの焼野原状態だった」とお叱りを受けたくらいです。急遽お取引先様に商品量を増やしていただきました」と振り返る。

以降は日程も第2回で9日、第3回から2週間へと拡大。「クッキーの楽しみ方を拡げる」という大きな目標はそのままに、「素材」「発見」「学び」「ビジュアル」をクッキーの4大顧客興味軸として設定し、それに各年の時代性をかけあわせて、テーマ選定をしてまいりました」と毎年新たな楽しみを提案し続け、今年の1週目は会場数も増やして、過去最大規模に。

3月1日〜6日は、「バター、粉、砂糖、塩など素材をクローズアップ」、「世界のクッキー、日本のクッキー」「かわいい缶、かわいいクッキー」を展開し、3月7日〜13日は会場を縮小し、「チョコレート、ナッツなど素材とクッキーの相性を楽しむ」がテーマとなっている。

いろんなクッキー缶が増えたからこそ、「当初よりも「クッキーの魅力」催事を知っていただいているお店が増えたので、より希少性の高いブランドを招聘できるようになってきました。作り手が増えているからこそ、阪急としてお声かけするブランドの精度が求められると思っています」とセレクト力にさらに力が入っていると語った。

日本一、クッキー缶がそろっていると言われる常設売り場

また期間限定ではなく、パティスリーやホテルなど、人気クッキー缶を一堂にそろえたのが「阪神梅田本店」(大阪市北区)。2021年に登場した、日本中のお菓子をセレクトした1階の売り場「おやつのひきだし」の一角にある「缶に入ったおやつ」コーナーだ。

こちらでは通常商品のほか販売日限定商品を含めると全40種ものクッキー缶をラインアップ。和菓子・おやつ商品部バイヤーで、同コーナーの企画者でもある折谷若子さんは「ほかの百貨店でこの規模は見たことはありません。スタート当初は30種でしたが、街やネットで見つけたアイテムや、期間限定イベントで扱い好評だったものを増やしてきました。まだまだ人気のクッキー缶も出てきていますので、今後も品揃えを強化していきたいと思っています」と語る。

きっかけとなったのは、2020年に新しい売り場へのテストマーケティングとして売場の一角で約10種類のクッキー缶を販売したこと。売場のターゲットである若い女性に好まれるアイテムと想定して企画したそうだが、大好評に。そこで2021年の建て替え先行オープン時に、同コーナーが誕生したのだ。

クッキー缶の価格帯は1000円未満から3000円代まで。なかには入荷日の開店時に来店する客もおり、すぐに売り切れるものも。定番人気は、東京でクッキーが人気のパティスリー「アディクトオシュクル」(4月より販売再開)、大阪でかわいいクッキー缶をいち早く提案してきた「コバトパン工場」による「コバト缶」シリーズ(毎月第1・第3水曜販売)だ。

「この1年半で、クッキー缶を始めましたというお取引先様もあり、まだまだ需要があることから、クッキー缶人気は衰えていないと感じます。やはり缶がかわいいものは反応がよく、自分1人で食べやすく、プチギフトにも使える小さなサイズのクッキー缶は増えていると思います」と語ってくれた。

トレンドを詰め込んだクッキー缶、ホテルでも企画

次々とケーキ店やスイーツ店の参入が増えているが、最近の人気クッキー缶をリサーチした上で、2022年11月1日から毎月50個限定で販売をスタートしたのは「大阪マリオット都ホテル」(大阪市阿倍野区)。店頭には並んでいないのにも関わらず、初回は即完売した知る人ぞ知るクッキー缶だ。

2022年3月から半年間かけて企画され、「流行っているという背景もありますが、流行だけでなく、美味しいクッキー缶は、リピート率も高いことが把握できました。また、缶のデザインがかわいければ、贈答品やお土産にもつながると考え、以前より販売したいと考えていました」と担当者は話す。

「開けたとき、美味しさ、(いろんな)味」、少なくとも3回はテンションが上がるクッキー缶を目指し、ペストリーシェフに依頼したのは、1)一枚ずつホテルのペストリーでの手作り。2)蓋を開けたときにぎっしり詰まったクッキー缶。3)もう1周したくなるように、いろんな味を楽しめるように。という3つの条件。

その結果できあがったのが、京都祥玉園の抹茶「泉の白」を使用した「抹茶サブレ」、アールグレイが香る「ディアマン 紅茶」、シナモンとナツメグが利いた「スペキュロス」など1種ごとに素材を厳選した13種が詰め込まれた1人向けサイズのクッキー缶だ(2800円)。

また、太陽の塔や通天閣をモチーフに、MARRIOTTの文字ととも缶をデザインしたのは、2025大阪万博ロゴを担当した大阪のデザイン事務所「シマダデザイン」。「このクッキー缶を今後10年、20年後も変わらず販売できるホテルの看板商品になればと思っています」と、まさに中身も、缶そのものの魅力が詰まった1缶となっている。

また気軽には買えないものの、予約制にしたのは、賞味期限が2週間と短いことからベストな状態で提供するためと、フードロス対策。毎月1日から予約をスタートし、10日(予約は〜5日)か20日(予約は〜15日)に、店頭での引き渡しか、発送にての引き取りとなっている(売り切れ次第、当月の予約販売終了)。

缶会社も売り上げが1年で約3倍に

このクッキー缶人気は、取り扱う会社にも大きな影響を与えて、公式サイトで製造が混雑しているため、なかには、新規オーダーメイド缶の受注を停止しているところもある。

企画・制作・印刷加工・発送まで手掛ける株式会社MAW(大阪市中央区)による「ヨツバ印刷」の担当者・南條康司さんも「クッキー缶の人気を実感しております」と話す。同社は少量・大量生産のどちらにも対応しているため、お菓子メーカーや個人クリエーターからの問い合わせが増えているそうだ。

その結果、この1年で受注が急激に伸びて、缶の売り上げは約3倍に。そして売れ筋の商品はやはり1人用にぴったりな正方形の120×120×42mm。先述の「大阪マリオット都ホテル」も含めて、百貨店でもよく見るようになったサイズだ。

「弊社は1個からでもオリジナルデザインで印刷加工ができるので、今後もクッキー缶需要にしっかり対応していきたい。現在は4サイズあり、最大20色展開しており、フードを使用して販売できるグッズを追加していく予定です。様々のロケーションでご使用していただければと思います」と、今後の人気継続に期待をかける。

なぜこんなにクッキーは人気なのか?

「阪急うめだ本店」の中塚比呂記さんは、時代とともにクッキーの「立ち位置」が変わったとことも、クッキー缶人気や好まれるサイズの変化の大きな要因となっていると話す。

「昔であれば、有名ブランドの大きなクッキー缶は各家庭の「高級お茶うけ菓子」であり、お客様が来た時に出したり、みんなで囲んで食べたり、といった感じだったと思われます。しかし、今は、クッキーはカジュアルなギフトとなり、家族構成単位も減っています。お一人で少しずつ食べて大体2週間くらいでなくなる量がちょうど良くなったのではないでしょうか」

また昨今のクッキー缶人気の理由は、「身近さ・デザイン性・クラフト感・希少性」がポイントと考察する。

1)身近さ…「誰もが食べたことのあるお菓子なので、老若男女とっつきやすく、フランス語やイタリア語の難しいお菓子って、美味しくても流行らないと中々食べようと思わないですが、クッキーはきっと誰でも食べたことあることから、身近に感じられていると思います」。

2)デザイン性…「パッケージも中身も、見た目が美しいものがあり、味や素材よりそっちから入ってきた方もいるのでは。美しい缶はアフターユースも可能ですし、元祖SDGsかもしれません」。

3)クラフト感…「作り手が1枚1枚手詰めをしている絵が浮かんでくるクッキーアソートが増えています。もちろん、必ずしもそうとはいえませんが、多くは実際手作りです。そういった手作りの温かみのようなものを感じるクッキーが受けている気がします。個包装で、工場での製造といった、これまでのおなじみのクッキーとは別物として捉えられている気がします」。

4)希少性…「多くが手作りということから、生産数に限度があり必然的にお客様が欲しい商品が買えない状況が続きます。これが、希少性や枯渇感を生み、長く人気が続いている要因だと考えています」。

今後はどんなクッキー缶が人気に?

中塚比呂記さんは、「外装(缶)のかわいさやセンスの良さにプラスして、中身のかわいさも重視されてきていると思います。きれいに並んだ見事さや、クッキーそのもののかわいさも選ぶ時の優先順位の高さになります。多種入っているアソートタイプも多いのですが、1~3種くらいのシンプルなタイプも意外と増えてきています」。

実際に、最近の人気のクッキー缶を見ていても、動物型のクッキーなどかわいいクッキーがパズルのようにきれいに詰まったものと、シンプルなクッキーが整然とビッシリ並ぶものの2極化が目立っている。卵や小麦粉の価格高騰が続くなかにも関わらず需要はとどまることなく、ここ数年で確実にレベルアップが進んでいるクッキー缶。今後もまだまだ参入する店舗や企業、料理研究家も増え、さらなる人気が見込まれる。

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阪急うめだ本店 https://www.hankyu-dept.co.jp/honten/
■阪神梅田本店 https://www.hanshin-dept.jp/hshonten/
■大阪マリオット都ホテル https://www.miyakohotels.ne.jp/osaka-m-miyako/
■ヨツバ印刷 https://www.yotsuba-insatsu.com/print/cookie-can.php

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