全国の「キタムラさん」と繋がりたい!…コロナ後遺症から立ち直った女性が、発信し続ける理由 先月にはトミーズ雅さんのお店でオフ会も

北村 守康 北村 守康

新型コロナウイルスに感染後、息切れや倦怠感など後遺症に悩まされ、日常生活もままならなくなったという話は今や珍しくない。京都市に住む北村悠(ゆう)さん(44)もコロナ後遺症に苦しんだ一人だ。2022年4月にスポーツ観戦をするため福岡を訪れ、その旅先で新型コロナウイルスに感染。39度近い発熱と嘔吐の症状があったが入院はできず、ホテルでの療養を余儀なくされた。高熱、呼吸不全、関節痛に苦しみながらも1週間のホテル療養を経て、帰宅するが今度は後遺症が待ち構えていた。

止まらない咳、倦怠感、気力減退に加え聴力の低下、もちろん仕事はできず、貯金を切り崩しながら自宅にふさぎ込む日々が何カ月も続くことになる。時間が薬となり、徐々にではあるが体力も気力も以前のように戻りつつあった。そんな時、「タナカヒロカズさん 同姓同名の最大の集まりでギネス記録達成」のニュースを知り、北村さんの中で何かが目覚めた。

「全国の北村さんと繋がったらさぞかし楽しいだろう」と思うが早いかSNSでアカウントを開設し、その日以来一日も欠かさず「全国の北村さんと繋がりたい」その思いの丈を発信し続けている。

ある日、ツイッターを通じて北村さん(以降、悠さん)から筆者にダイレクトメッセージが届いた。「ツイッターで毎日『全国の北村さん』を紹介しているので、ぜひ紹介させてほしい」というのだ。この記事の署名を見てもらえば分かるが、筆者も北村姓だ。その数日前に“北村の印影”のアカウントからフォローされ、その存在は知っていた。怪しさはなく、純粋に同じ姓同士で交流したいのだろうと思い、先方の要望どおりに写真と簡単な自己紹介文を送ると、数日後にそのアカウントで筆者の紹介が写真付きでツイートされた。すると複数の見ず知らずの北村さんから「いいね!」が付いた。これまでに味わったことのない仲間意識を伴う感情が湧いたのを覚えている。

悠さんのように自分と同じ姓の人たちと繋がろうとする動きは他にもある。栃木県の佐野市に至っては、全国最多の「佐藤」姓ゆかりの地としてまちおこしをしている。

先述した「タナカ」や「佐藤」の人口は優に100万人を超えるが、「北村」の人口は15万人余りと少ない。ただ「キタムラ」は同音異字が多く、北村のほか喜多村、喜田村、北邑など、悠さんによると少なくとも10以上の少数派のキタムラがいる。

「キタムラ姓であれば、漢字の表記は問いません。旧姓がキタムラさんでもOK。キタムラさん同士が交流して、楽しく、助け合いの気持ちが自然と芽生える、そんなコミュニティのようなものを築ければと」

その足掛かりとして、去る2月23日に大阪市内でオフ会が開催された。第1回「北村界オフ会」の参加者は総勢8名(うち夫妻で参加が1組。すべて多数派の「北村」)。規模は小さいものの、親戚関係にない北村姓の人たちが集う珍しい会となった。会場も「キタムラ」にこだわった。「遊食 喜多村」は漫才コンビ「トミーズ」の雅さんがオーナーを務める居酒屋で、そのことは予約後に知った。

悠さんの呼びかけがなければ決して出会うことのなかった北村さんたち、初対面でもすぐに打ち解けられたのは同姓のなせる業に違いない。当日、偶然にも雅さん夫妻が店を訪れていて、オフ会に参加していた北村さんたちと記念撮影をしてくれた。何を隠そう雅さんの本名は「北村雅英」、北村界の有名人だ。

勢いだけで始めた活動ゆえ、やりながら気づくことも多い。一番の問題は活動費のことだ。多くの時間と労力を費やすものの1円のお金にもならない。そんなことは当初から分かっていたが、それではいずれ経済的理由で活動を続けられなくなる。ビジネス的要素も必要と感じつつも、その方面に強い北村さんと出会ったときに相談すればいい。今はとにかく一人でも多くの北村さんと繋がることが最優先だ。次回のオフ会は、4月23日に東京浅草で開催する。

悠さんには離婚経験があり、女手一つで育て上げた子どもが二人いる。しかし二人とも別れた夫の姓を継いでいる。

「私は一人娘なので私の代で絶家になるんです。『全国の北村さんと繋がりたい』その思いだけで始めた活動ですが、私のように姓を継ぐ次の世代がいない“ラスト キタムラ”たちが無縁仏にならないよう、血縁を超えて墓守してくれるキタムラさんの共同墓地を作りたい。最近強くそう思うようになりました」

コロナ後の悠さんの新たな挑戦はまだ始まったばかりだ。同じ北村姓として、筆者も自分の得意分野で悠さんのこの活動を後押ししたい。

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▽「全国の北村さんと繋がりたい」公式ツイッター
https://twitter.com/kitamura2022

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