2本の縄をチームで跳ぶ「ダブルダッチ」のショーで活躍し、世界的に知られるサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」にも出演した見島良拓さん(34)=京都市左京区=が、知人と共同で飲食店を始めた。アルバイトをしながら夢を追い、かなった後の人生を見つめ直した経験を生かし、「同じ立場の人たちが前向きに働く場に」との思いを込めている。
見島さんは立命館大在学中にダブルダッチを始め、卒業後はプロチームの一員として活動。2016年からは「シルク」に参加して華やかなエンターテインメントの本場・米国を中心に活躍してきたが、新型コロナウイルスの影響で20年春に帰国した。
プロになっても国内では生活のためにアルバイトが必要だった。「プロとして、本当はバイトしてますとは言いたくなかった。バイトは時間とお金を交換するだけという感じだった」と振り返る。「シルク」出演のアーティストになり夢はかなったが、「セカンドキャリアは常に気になっていた」。帰国後は所属会社の関西代表として、ダブルダッチ教室の運営やイベント企画など裏方に回った。
環境問題への関心から無添加のレモネード販売にも乗りだし、知人で飲食店を営む前田雄介さん(35)に相談する中で、ピザを中心とした店を開く話へと進んだ。「昔の自分のようなアルバイトでなく、働く意味を感じて、自分のやりたいことの実現に一歩近づく店にしたい」。そんな思いから、ショーやビジネスなどで夢を追う人が客に自らをアピールしながら働けると知人らに声を掛け、スタッフ7人が集まった。
その一人、岡田璃伊奈さん(24)=左京区=は22年夏から古着の着物を活用する「アップサイクル」のビジネスを始めた。「自分を認めてもらい、生かしてくれる場所だと思った。この店で私の発信することに興味を持ってもらえたら経験値が上がる」と話す。
1月9日にオープンした店は「SCHOLE(スコレー)」(京都市下京区大宮通木津屋橋上ル)。見島さんが学生時代によく練習していた梅小路公園に近く、店内ではダブルダッチの映像も流し、自ら手がけるレモネードも販売する。「親子で来た人がダブルダッチに興味を持ち、応援してもらえるような店にもしたい」と夢を膨らませる。