佐世保生まれの「レモンステーキ」ってなに? 昭和レトロブームに乗って再注目、老舗洋食店創業者に聞いた

八木 純子 八木 純子

 長崎県佐世保発祥のグルメ「レモンステーキ」が昭和レトロブームに乗って、再び注目を集めている。高温に熱した鉄板で薄切りのお肉を焼き、特製のレモンソースをかけたシンプルなメニュー。展開しているのは昭和54年(1979年)に東京・下北沢で開業した老舗洋食店、ステーキ&焙煎カレーの「ふらんす亭」。創業者の松尾満治さんに話を聞いた。

日本生まれの「レモンステーキ」って何?

 みなさんは「レモンステーキ」をご存知だろうか?昭和30年代の長崎県佐世保で、欧米の食文化に触発されて誕生したと言われている。ステーキといえば、分厚い肉を思い浮かべがちだが、こちらは薄切り肉で作られているのが大きな特徴。そして、レモン果汁を使うことで、さっぱりとした味わいになり、食べやすい。

正統派のレモンステーキを引き継いだ「ふらんす亭」

 店名はフランス料理のお店かと間違えられそうだが、その昔、佐世保にあった高級レストラン「佐世保ふらんす亭」に由来する。店は現在はないが、当時の東島料理長が“すき焼き”をアレンジし、レモンステーキを考案。やがて地元の名物料理にまでなった。

 つまり、50年以上前に佐世保で生まれたレモンステーキの味を引き継いだのが、このステーキ&焙煎カレー「ふらんす亭」というわけ。創業者の松尾満治さんは22歳のときから修業を積み、いまも忠実にその当時の味を守り続けている。そのため、佐世保生まれのレモンステーキ本来の味が楽しめると、今も足繁く日参するファンが少なくない。

 もっとも、ここに至るまでは紆余曲折もあった。開業当時から佐世保生まれのレモンステーキが話題となり、東京を中心に全国に発展。一時期は、約200店舗まで拡大した。

 その後、BSE問題の影響などもあり、経営不振に陥り、次々と経営母体が代わったという。再び、創業者の手に経営権が戻ったのは2019年のこと。松尾さんが設立した「株式会社ふらんす亭」へ事業譲渡されたのだ。その矢先に、コロナ禍に見舞われ、現在は10店舗ほどだが、ふらんす亭を知るファンはコロナ禍でもお店に通ってくれたそうだ。

熱々のレモンステーキの味は“旨甘”で美味

 メニューの見直しなどを図り、ふらんす亭が再び、本格的に展開しはじめたのが2022年の年末のこと。これを機会に再び人気に拍車がかかってきたという。名物のレモンステーキ(サーロイン120g、1480円税込)は熱々の鉄板で出され、例によってジュージューという音が食欲をそそる。

 食べ方は鉄板が熱いうちに肉をひっくり返し、お客さん自身で両面を焼きあげる。ソースの沸騰が落ち着いきたら、レモン果汁を全体に絞りかける。少し煮詰まると“旨甘”で、さっぱりしたレモンステーキができあがる。これが、半世紀以上前に誕生した伝統の佐世保のレモンステーキだ。常連客の中にはご飯を鉄板に入れ、ソースと焼き絡める人もいる。最後まで“旨甘”が楽しめるからだ。

 一度食べれば、再度食べたくなる味で、また、昔、食べた人が「懐かしい」といって注文する人が増えているともいう。加えて、名物のレモンステーキの新商品も登場。こちらは山形県の平田牧場の「三元豚を使った旨甘レモンステーキ」(120g、990円税込)で、こちらも話題を呼んでいる。

焙煎カレーも人気を二分レモンステーキとのセットも◎

 レモンステーキ以外にも、柔らかい部位のリブステーキやハンバーグも人気。特にレモンステーキと二分するほどの名物が焙煎カレーだ。玉ネギをトロトロに炒め、小麦粉を深く焙煎して、仕上げており、こちらも1979年の創業当時から変わりない。

 カレーとレモンステーキのセットもあり「創業当時の2つの味を思い出し、懐かしい気分になった」という常連客も少なくないそうで、松尾さんは「昔、ふらんす亭にファミリーで通ってくださったお子さんが成人され、当時を懐かしんで来てくださることもあります。これからもみなさんに愛されるふらんす亭でありたい」と話している。

◇「ふらんす亭」
直営店は「新宿西口店」(東京都新宿区西新宿1-12-6新宿月光荘ビルB1F)など5店(店舗によってメニューが異なる場合がある)
www.francetei.com

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