とある放送局の公式ツイッター。出演者3人がおそろいの新品パーカーを着て並んでいますが、よく見ると、ひもを抜いている人と残している人がいます。ツイッターでひもの扱いを調べると、「買ったらまず抜きます」「抜く派です」「ラーメンを食べるときに邪魔になるから最初から取る」「長いひもが好き」「かわいいひもならそのまま」「抜いたひもは手芸で再利用する」など。パーカーのひも、あなたは抜く派ですか? それとも残す派ですか?
抜きたい…でももったいない…
育児漫画の作者ナナイロペリカンさんは、ひもが邪魔だと思っている一人。育児ブログ「たまご絵日記 ~2児のかあちゃん奮闘記~」の中でこんなエピソードを披露します。
ナナイロペリカンさんは購入して3年になるパーカーがお気に入り。「暑すぎず、寒すぎず、家着としてちょうどいい」。唯一の欠点はひもが邪魔なこと。不便だと思いつつも、外してしまうのはもったいないと葛藤します。
おしゃれな結び方が多数あることを知りますが、素材によってはうまく結べないことも。邪魔なときだけ服の内側に入れる方法も試しましたが、今度は先端の金具が肌に触れたときの冷たさが不快でした。
「パーカーのひもに振り回されている」。そんなときに思い出したのが、大好きなミュージシャン星野源さんの存在。あるミュージックビデオの中で星野さんがパーカーを着用していたことを思い出し、映像を見返すと、星野さんのパーカーにひもはなし。シュルルル。推しにならい、迷いなく自身のパーカーからひもを外したのでした。
専門家「過去に一度、ブームが…」
神戸ファッション専門学校(兵庫県神戸市中央区)でスタイリスト論を教える吉田祥子先生に話を聞きました。
そもそもパーカーのひもの役割とは。「雨風をしのぐためのフードが脱げないように、縛って固定するためのものです」(吉田先生)。
吉田先生は同校1年生の20人を対象に「パーカーのひもは取るか、残すか」を調査したところ、取ると答えた学生はゼロでした。
「18〜19歳の学生たちにパーカーのひもを取るという感覚はありませんでした。『かわいいから蝶々結びにする』という学生もいました。最近では太めのロープやカラフルな色使いのもの、サテン素材の幅広リボンなどを使った商品を目にすることもあります。胸元のおしゃれを狙ったデザインだと思います。ファッション雑誌の最新号を調べると、『メンズノンノ』などで男性モデルがパーカーのひもを蝶々結びにする着こなしがいくつか掲載されていました」(吉田先生)
一方、子ども服に関しては、安全基準のJIS規格が定められており、「子ども服ブランドのパタンナーから聞いた話では、子ども服のパーカーにはひもは付けないことが基本となっているようです。思わぬ事故が起こらないための配慮だそうです」。
ここで吉田先生は有力な情報を教えてくれました。「20〜30年前に一度、パーカーのひもを取ることが流行ったことがあります」。おしゃれ重視よりも、邪魔で取ったことからブームに火がついたそう。当時20代だった人たちが40代、50代になっても若いころの習慣が残っており、今でも新品のパーカーを手にするとひもを取るのではないかと推測します。そう言われると、冒頭のひもを抜いていた出演者もアラフィフ世代でした。
吉田先生はパーカーのひもについて「安全のための配慮が必要であったり、コーディネートのワンポイントとして使うことがあります」とした上で、「大人のパーカーの着こなしでは、ひもを取るのも残すのも自由です。最も大切なのはフード部分の形です。パーカーはフードの大きさや形によって、かなりファッション度が違ってきます」とフードの見栄えの重要性をアドバイスしてくれました。