事件事故が起きた時、スマホを片手に群がるヤジウマが増えました。一方、ヤジウマは高みの見物を決め込むばかりで、トラブル解決につながらないという問題もありました。そんな撮影者たちのライブ動画をそのまま警察に通報することができる「110番映像通報システム」が、10月から全国の警察で導入されます。このシステムの仕組みを志水恵美さん(@shimizoon)がわかりやすく漫画で解説しました。
「誰も助けてくれなかった」傍観者のヤジウマ描くきっかけに
ーー110番映像通報システムを紹介する漫画を描いた理由について教えてください。
「私はデザイナーとしてプロボノ(職業上のスキルを生かした社会貢献活動)をしています。痴漢抑止活動センターの代表が、朝日新聞の110番映像通報システムを紹介する記事を読んでいて、『これすごくない!?』と教えてくれました」
「『是非広めたいから図解にしてツイートして』と提案されたのですが、新聞記事を読んだ私の第一印象が『事件に巻き込まれてる最中にログインしてる余裕ある…?』だったのと、『撮影中に通話は続けられるのか?』など、記事だけではシステム面がよくわからない部分もあったので、仕組みの紹介ではなく、『どのような時にこのシステムが有効か』を私なりに伝えようと思い、このマンガを描きました。ちょうど記事が出る前日に、ベビーカーから赤ちゃんを連れ去られそうになる事件があり、『周りの人が誰も助けてくれなかった』という介助者の主張が話題になっていたのもあって、何もしない傍観者『ヤジウマ』を描こうと思いつきました」
ーー事件事故が起きた時、圧倒的多数の人は傍観するヤジウマです。
「写真撮る暇があったら、逃げて?とは正直思います。凶悪事件や天災だとただ『逃げて?』なのですが、人が倒れたとか、撮影する行為自体がモラルに反する場合もあると思います。気軽に撮影ができて、『こんなことがあったよ』って友達に連絡したい気持ちもわかるし、それをSNSに上げたら承認欲求が満たされる現代社会で、野次馬(迷惑なだけ)と盗撮(犯罪)の線引きってすごく難しいと思うのですが…。『みんなやってる』から特に考えもせずにやってる人が一番多いと思うので、実は、他にも選択肢があるんだよ?ということを、大人が示していって欲しいな、と思います」
映像送れば警察に状況伝えやすく
ーー映像通報システムが広がれば、どのような効果があると期待されていますか。
「まず、犯罪者からすれば、監視カメラがいっぱいあるような状態なので、犯行がエスカレートしにくいと思います。次に、うまく警察に説明できなくても『最悪、映像を送ればいい』という安心感から通報のハードルが下がるかな?と期待しています。私は一度だけ警察に通報した経験があるのですが、業務中の警察官に喋るのって、ものすごく怖いんです(笑)。免許更新の窓口にいる警察官ですら怖かった(笑)」
ーー投稿が反響を呼んでいます。
「『知ってる』こと自体が防犯になるので、多くの人に知って欲しくて漫画を描きましたが、予想以上の反応でびっくりしています。みんなこういう機能を待ってたんだな!と思いましたし、『いつか使うかもしれない』と行動を起こす準備にしてくださった方がたくさんいて、とても嬉しいです」
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志水さんの漫画は「何これ、すごーい!」「野次馬を止めるのではなく、野次馬に役割を持たせるという発想が画期的」「素晴らしいシステム」と反響を呼び、約5万件リツイートされました。傍観者だったヤジウマを通報者に変える「110番映像通報システム」、ぜひ広く普及してほしいですね。