ハンドメイド作品をネット販売するねこわらび(@YFYmiv4mA1HbPRi)さんが訴えた「ハンドメイド作品に対して値下げ交渉はやめてください」というツイートが話題を呼んでいます。ある客からハンドメイド作品(送料込み1800円)の値段を下げるよう求められ、「譲歩もしてくれないんですか?」「原価300円くらいですよね?」「そうまでして高く売りたいんですか?」と再三迫られました。「定価で買って下さったお客様に対して不公平になってしまう」と値下げを断ったねこわらびさんが「ハンドメイド作品は原価だけでなく、作家さんのこだわりやアイデアのためにお金をかけて作られています」と理解を求めたツイートは、「技術力は0円じゃ買えない」「原価って言うなら自分で作ればいい」と共感を呼び、約8万件のいいねが付きました。ねこわらびさんに聞きました。
一つの作品に8時間かかることも
ねこわらびさんは高校1年から活動を始め、手作り雑貨販売サイトminneでハンドメイド作品の販売を始めました。くり抜いたコルクの中にレジンという透き通った樹脂を流し込み、クラゲやクリオネ、草花を閉じ込めて幻想的な海の世界を生み出す作風で、1000円台の作品が中心となっています。現在は大学に通いながら、ハンドメイド作家として活動しています。コルクを使った作品の場合、背面に光を通さない形では制作時間が約6時間、背面から光を通す形では7〜8時間ほどかかるといいます。
今回の値下げ交渉は、客からTwitterのダイレクトメッセージで通じて届き、「1800円だと予算がオーバー」「お値下げしてもらうことってできますか?」と求められました。ねこわらびさんが「大変申し訳ないのですが、作品のお値引きはお断りさせていただいております」と値段交渉には対応できない旨を伝えると、「学生の身なのでお金がありません」「譲歩もしてくれないんですか?」と再度値引きを求められました。
ねこわらびさんが「当方も学生の身のため、そう言われる気持ちも十分分かります」と理解を示した上で、「ハンドメイドは量産品ではありませんし、学生さんだからと値引きしてしてまっては、定価で買って下さったお客様に対して不公平になってしまいます」と説明しましたが、「コルクとレジンって原価300円ぐらいですよね?そうまでして高く売りたいんですか?」とさらに詰め寄られました。ねこわらびさんが「ハンドメイド作品を作るのに必要な費用は原価だけではありません」「原価の値段のみで販売されている作家さんはほぼいません」と説くと、やり取りは打ち切られました。
ーー値下げ交渉の後、ダイレクトメッセージが送れなくなっています。
「お相手様からブロックされたのだと思います」
ーー今回、値下げを求められた作品について教えてください。
「『約束の小夜曲。』という作品で、特徴はこだわり抜いた背景と海底の表現、そこから織り成されるどこか冷たさを感じる夜の海の風景を感じられる所でしょうか」
ーー値下げ交渉を求められることはしばしばあるのでしょうか。
「最近は主にminneさんで販売を行なっており、そこまで値下げ交渉をされることはありませんが、作家さんに対してメッセージを送ることができる機能がございます。メルカリなどのフリマアプリで販売をする時や、今回のようにネット上で販売する時はたまにされることがあります。フリマアプリの場合はその名の通りフリーマーケットになりますので、値下げ交渉をされても仕方ないと言えばそれまでなのかな、というのも感じますね」
ーーかなり強い口調で値下げを求められました。
「今回に関しましては、お相手様も学生さんのようでしたし、純粋に自分の作品を欲しがってくれただけなのかな、という見方をしています。自分とそれほど歳が離れているというわけではないので、1800円が高いと感じる気持ちも十分分かりますし、作家として譲歩はしてあげられないからごめんね、という感じです。そこまでして高く売りたいのか、という点に関しては、手間暇と愛情をかけて作った自分の作品ですから、原価以上の価値を見出してほしいと思うのは事実なので何も言い返すことはありません」
ーー原価並みの値段で売ってほしい、と意見についてどう思いますか。
「ツイートした中にも書いてある通り、作品ひとつを作るのにかかるのは材料費だけではありません。ハンドメイド作品は見た目以上に時間と手間がかかるものなんです。パーツを組み合わせるのにもどういった組み合わせにするか、どんなデザインでどれくらいの大きさに仕上げるか、使いやすい大きさは?色は?どんな加工で仕上げることが出来るかなど、考えることは山ほどありますし、ぶっつけ本番で満足のいく作品が出来るとも限りません」
「製作に取り掛かるまでにも見えない手間がたくさん存在します。これはハンドメイドに限らず、全ての業界において言えることだと思いますが、それを原価並みの値段で売ってくれと言われてしまうと、作家としては影の努力に対する報われなさを感じてしまいます」
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ハンドメイド作品の値下げ交渉に一石を投じた今回のツイート。ねこわらびさんは投稿を消すことも考えたそうですが、「ハンドメイド作家さんたちの原価と労力の問題について、多くの方に知って頂ける機会かと思い、そのままにさせて頂いています」と残すことにしたといいます。ハンドメイドに限らず、あらゆる商品が原価販売では作り続けられません。フリマアプリでは値段交渉が当たり前になりましたが、作り手が作品に注いだ時間や技術に敬意を払うことも忘れないようにしたいですね。