インスタで見た「免許証偽造の業者」に依頼 8万5千円支払い3日でポストに「警察を欺けると…」犯罪発覚恐れ、罪を重ねた男の一部始終

京都新聞社 京都新聞社

 6月2日午前。被告の男(29)は無地のスーツに身を包み出廷した。裁判長から起訴状の内容に誤りがないか問われると、「間違いないです」とはっきり答えた。

 男は京都市在住。検察側の冒頭陳述によると、免許を取得した翌日の2012年、交通違反を重ねて取り消される。再取得しようとしたものの、不合格に。ところが、内装業の仕事で必要だと言って、無免許の事実は告げず、3年前から兄に車を借りて運転していた。

 被告人質問では、「仕事が多忙で教習所に行く時間が限られ、試験に間に合わなかった」と釈明。兄の車を使う前からも、友人に借りた車で無免許運転を繰り返していたと明らかにした。

 こうした中、今年3月、自宅を訪れた警察官から、大津市内で物損事故を起こしたとして大津署への出頭を求められる。

 「車検証と免許証を持って、事故を起こした車に乗ってくるよう指示された。免許を持ってなかったのでネットで購入した」(被告人質問)

 男はインスタグラムで知った「運転免許証を偽造する業者」を思い出す。この業者にメールで連絡を取り、顔写真などを送って8万5千円を支払った。わずか3日でポストに偽造免許証が投函されていたという。

 京都市内から大津署まで無免許で向かった後、警察官に偽造免許証を渡す。警察官は確認のためいったん場を離れるが、すぐに戻ってきて男を追及。あえなく偽造が発覚した。精巧なものではなくインクジェット用紙に印刷した作りだったという。陪席裁判官から「警察を欺けると思っていたのか」と問われた男は、「思っていました」と答えた。

 「無免許で出頭すると捕まると思った」という安直な動機。男は犯罪の発覚を恐れて、罪を重ねた。簡単に免許証の偽造を依頼できてしまうネット社会も恐ろしいが、警察官は免許証を扱うプロだ。本物かどうかは一瞬で分かる。

 6月14日。裁判長は執行猶予付きの判決を言い渡した。「自分のやることがどうなるのか、よく考えて行動して」と付け加えた。

運転免許証偽造 3月9日、無免許で大津署付近の道路を運転したとして、京都市の内装業の男(29)が逮捕された。その後、運転免許を偽造し、偽造免許証を警察官に提示したとして再逮捕され、有印公文書偽造、偽造有印公文書行使、道交法違反の罪で起訴された。6月14日、大津地裁は「無免許運転の発覚を免れるために犯行を重ねた。無免許運転は常習的で、交通規範軽視の姿勢も見過ごせない」として懲役2年、執行猶予3年を言い渡し、偽造免許証を没収した。

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