猫34匹の遺棄事件…段ボール箱に詰め込まれた母猫と子猫が見つかる 地域猫活動団体、情報提供を呼びかけ

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「【過去最大級猫34匹の遺棄事件】
発見したこの地域の方から画像をお借りしましたが、
こんな小さな箱に母猫2匹と乳飲み子12匹を詰め込んで放置遺棄していたということ。
理解できない、理解したくもない。警察は必ず犯人を突き止めてほしい。」

東京都町田市内で段ボール箱に詰め込まれるなどして猫34匹が遺棄されていたことが分かりました。

見つかったのは、8月7日朝。まず段ボール箱に詰め込まれた母猫と乳飲み子(子猫)13匹とその付近に子猫12匹の計25匹を、地域猫ボランティアが保護しました。さらに同日夕方に母猫と子猫6匹を、翌日以降に取り逃がしていた子猫3匹を保護したといいます。

その地域猫ボランティアから遺棄事件の連絡を受けたという、TNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す)活動支援団体「町田ねこの会」の代表・河底さんによると、最初に猫25匹を保護した地域猫ボランティアが町田署に通報。同署は、動物愛護法違反(遺棄)容疑で捜査しているそうです。

また保護された猫34匹は目立ったけがや病気などもなく、今は町田ねこの会のシェルターや預かりボランティアのところなどで元気に過ごしているとのこと。河底さんは「見つかった34匹の猫たち。関東エリアでは過去最大数の遺棄事件だといわれています。ただ不幸中の幸いで、みんな無事でした。おそらく誰かが見つけて飼ってくれるだろう、という浅はかな考えで捨てたのだろうと思いますが、動物遺棄は犯罪です。発見エリア周辺にチラシを配るなどして、犯人逮捕につながる有力な情報をいただけるよう呼び掛けています。そして、まだ取り逃がした猫もいるようで今も捜索を続けているところです」と話します。

地域猫ボランティアが遺棄された猫たちを発見、警察に通報

猫たちが遺棄された場所では、地域猫ボランティアが数人でチームを組んで担当の地域猫にご飯をあげたり掃除をしたりしているとのこと。この日も、地域猫ボランティアたちがお世話のため訪れたところ、猫たちがぎゅう詰めになった状態の段ボール箱を発見しました。入っていたのは、2、3歳くらいの母猫2匹と目の開いていない乳飲み子11匹。さらに段ボール箱から離れたところで、生後2カ月ほどの子猫12匹が数カ所に固まっていました。そこで、地域猫ボランティアは計25匹の猫たちを捕獲し、動物病院へ急行したといいます。

「町田市は飼い主のいない猫との共生モデル地区制度をとっており、野良猫を地域猫として周辺住民が見守り管理しています。猫たちが見つかった場所もボランティアが地域猫を管理しているところです。犯人はお世話をしているボランティアの存在を知っていたのでしょうか…段ボール箱の周りには申し訳程度にキャットフードが置いてありましたが、ここの場所に捨ててもボランティアに面倒みてもらえると思ったのかもしれません。そう考えるのも乳飲み子たちが思ったより健康状態が良く、外にいたのもほんの数時間程度のようで…1匹も命を落とす子がいませんでした。ボランティアが訪れる時間を知っていたのか、その直前の数時間以内に遺棄したとみられます」(河底さん)

2カ月の子猫も遺棄 河底代表「人慣れしてゴロスリ、おとなしくていい子ばかり」

そして猫25匹に続き、その日の夕方以降に猫9匹を保護。また通報を受けた警察も駆け付けて現場検証や周辺住民への聞き込み調査などを実施したとのことです。

保護時の猫たちの様子について「私たち団体は猫の多頭飼育崩壊の現場に入ることがあるのですが、たいてい猫たちの健康状態が悪いことが多いです。今回は、目に炎症のある子猫がいたくらいでそれほど健康状態に問題がある子はいませんでした。駆虫しても全く虫も出てきませんでしたし。ただ、獣医師さんいわく、母猫が年齢の割には痩せていて栄養状態があまり良くなくて、少し心配しましたが今は栄養をつけて元気です」と河底さん。さらに「母猫もそうですが、2カ月の子猫たちも人慣れしていてシャーも言わない。ゴロゴロスリスリしてきます。おとなしくていい子ばかり…捨てる直前までとてもかわいがられていたように感じます」と言葉を詰まらせます。

現在、猫34匹のうち20匹を町田ねこの会が一時保護し、残り14匹の猫たちは預かりボランティアのところにいます。今後、猫たちの里親さんを探すため、町田市内の住民を対象に譲渡会を開く予定です。

   ◇   ◇

ボランティア「『誰かが拾ってくれるだろう』という安易かつ無責任な行動はきちんと罰せられるべき」

今回起きた猫34匹の遺棄事件について、地域猫ボランティアや河底さんたちは心のうちをこう語ってくれました。

「私は心から怒りと悲しみを覚えます。これまで社会全体でもコロナ禍の動物遺棄事件などニュースで目にすることがありましたが、目の前で事件が起き、一層これが大きな問題であることを身に染みて感じました。動物の遺棄はれっきとした犯罪。『誰かが拾ってくれるだろう』という安易かつ無責任な行動はきちんと罰せられるべきであり、世間がより深刻に捉えるべき問題です。遺棄がどのような経緯で行われたか不明ですが、例えば安易な動物の購入や飼育、また悪質なブリーダーなどが犯人であるならば、このことから社会でまだまだ考えるべき、または取り締まるべく法律を変えていかなくてはいけないということが明白に見えていると思います。

今回、ねこの会さんのSNSを通じて事件を知っていただくこと、そこから世の中に啓蒙の1つとして動物遺棄について考えてもらいたいという目的で、情報発信をしていただきました。私自身もSNSを活用して発信しています。見ている方が思っていた以上にいて本当に驚きました。さらに、そこから呼び掛けた支援に早急に応じてくださる方が想像以上にいらっしゃり、本当にうれしく思いました。このような話を知って、『助けたい』『何かできることがないか』という人としての優しさを行動にしてくださる方がたくさんいることが何よりもありがたいこと。この社会も捨てたものではないと、皆さんの行動に心強く思いました。弱き立場の生き物を守ることができる社会のルール、また優しい気持ちで接することができる人が多くいる社会こそ、本当の意味で日本が先進国になれるのではないかと思っています」(地域猫ボランティア)

「遺棄事件の反響について私は、動物にも命があり、また人間と同じように感情や心があることをもう一度考えてほしいと感じました。育った環境から追い出され、母猫や兄弟とも引き離され、子猫たちはとても怖い思いをしたのだろうと…また母猫も昨日までお乳をあげていた子猫が急にいなくなったことで不安定にもなったと思います。シェルターにいる母猫のしっかりと張ったおっぱいを見るたびに私たちは悲しい気持ちになります。

今回、誰かが見つけて飼ってくれるだろう、という浅はかな考えで捨てたのだろうと思いますが、その自分勝手な方のせいで多くの人が日曜日(8月7日)という一日をつぶされ、走り回り振り回されました。それは今でも変わりません。医療費もかかりますし、ただかわいいだけではありません。命あるものに対しての意識と、そして動物福祉の面も考えられる日本になってほしいと願っています」(河底さん)

遺棄事件を知った人たちからたくさんの支援が届いています。「微力ながら応援しています」「猫ちゃんの命を救って下さりありがとうございます」などとメッセージが添えられていたギフトが多かったそうです。

飼い猫などの遺棄。2020年6月に施行された改正動物愛護法により、飼い主がペットを捨てた場合、これまで100万円以下の罰金刑だけでしたが、1年以下の懲役刑が加わり、厳罰化されました。犯罪です。小さな命を捨てないでください。

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