海の2倍以上の死者
厚生労働省の統計では、3歳から14歳までの多くの年齢における不慮の事故死の死因のうち、交通事故に次いで多いのが「溺水(屋外):海、川などの自然水域」です。2010年から2014年の5年間で、0歳から14歳で溺水(屋外)が189件発生しました。
警察庁によると、2021年の水難発生件数は1395件で死者・行方不明者は744人(中学生以下は31人)です。そのうち、河川・湖沼池は41.1%の306人(中学生以下24人)、河川のみは253人(34.0%)です。2003~2021年の場所別の死者・行方不明者数をみると、中学生以下の子どもの6割は河川・湖沼池で亡くなっており、海の2倍以上です。子どもにとって川は不慮の事故に遭いやすい場所といえます。
さらに、交通事故による死者は年々減っているものの、河川・湖沼池における水死者・行方不明者はほぼ横ばいです。毎年同じような事故が繰り返し起こっていることがうかがえます。
河川財団のサイト「子どもの水辺サポートセンター」では、全国の水難事故マップを公開しています。2003~2021年の19年間に、川や湖沼等で水遊び、釣り、遊泳、レジャーなど、様々な状況で発生した水難事故のうち、新聞やWEBニュース情報から把握した2994件の水難事故の内容と事故発生地点の位置情報を表示しています。
また、水辺で感じた危機事例を「ひやりはっとプラットフォーム」で紹介し、事故防止の備えや対応を記しています。一部を抜粋します。
・水際の護岸や浅瀬の石などは表面にコケが付着していることが多く、そのコケがとても滑りやすくなっています。リバーシューズといわれる専用靴であれば多少は滑りにくくなりますが、絶対に滑らない訳ではありません。滑った後に本流に流されたり、深いところまで流されると、溺れることに直結します。水際に近づくときや浅瀬に入るときには滑りにくい靴を履くことも大切ですが、滑って流されることを前提に、事前の準備をしましょう。
・川は一見穏やかに見えても流れの中に入ると、実際は思った以上に流れは速いものです。流れの速さは岸際と川の中央付近など場所によって違います。また浅いからといって安心していると足をすくわれて深いところへ流されてしまうこともあります。
・水際は、人間の居住空間とは異なり、平らなところがほとんどなく石などで凹凸のあることろがほとんどです。そして平地で歩き慣れている現代人にとっては予想外に転びやすいものです。また、大きな石や岩であっても、その底の部分が流されていて、その上に乗ったときにぐらつくような浮石となっていることがあり、転んで手をついた時に捻挫や骨折することがあります。水際に近づくときには、転びやすい場所だという認識をするとともに、自分よりも大きな石や岩であってもぐらついたり動いたりする可能性があることを十分に考えましょう。
・堰堤の直下にはリサーキュレーションという縦回転の上流側に逆巻く渦が発生しています。その渦にはまってしまうと、上流からの落ち込む流れと、渦の逆巻く流れにはさまれて脱出できなくなります。このようなリサーキュレーションが発生しているところには絶対に近づかないようにしましょう。
・川底はプールなどの人工的な空間とは異なり、平らなところはほとんどありません。一般的には岸から川の中央へ向かって深くなっていると思われていますが、地形等の影響で川底が急にえぐれていたり、崖の様に落ち込んでいるところがあります。このようなところでは流れが複雑になっているために、足をとられ不意に沈むことでパニックになり、下に向かう流れに引き込まれると、さらにあせって溺れてしまいます。