煮物などに使う高野豆腐を材料に、寺社や城の模型の制作を続ける元料理人の男性が京都府城陽市にいる。金閣寺や平等院、大阪城などこれまでに手がけた作品は20点以上。乾燥した状態の高野豆腐を削る作業に没頭し「楽しく、心のゆとりになる」とほほ笑む。
下白石一男さん(74)=同市富野。奈良県橿原市の観光ホテルの料理長だった頃、食材で客をもてなそうと、正月になると、建築物やえとの作品をロビーに飾っていた。
設計図はなく、実際に寺社へ行って撮影した写真やスケッチを基に、制作に取りかかる。水で戻す前の高野豆腐を接着剤で貼り合わせたり、彫刻刀やナイフで削ったりして精巧に作られた作品は、毎年客から好評を得た。
退職後は地元の陶芸サークルで活動したが、新型コロナウイルスの影響で解散となり、高野豆腐による置物作りを再開した。最新作は、高野豆腐約200個を使い、2カ月かけて完成させた大阪城。天守閣の屋根の厚みやそりが見事に表現されている。
食品のため長く保存は利かないという。下白石さんは「調理師として食材で作ることにこだわりたかった。日がたつと、少し色が変わってくるのもいい」と話した。