創業70年の「玉子焼き屋」が大躍進中! アイドルや他企業とコラボ連発 一体何が起きている?

黒川 裕生 黒川 裕生

寿司店などに納品する玉子焼きを作り続けて70年。職人たちが受け継いできた確かな味と、いぶし銀のような存在感でファンも多い「山田製玉(せいぎょく)部」がここ数年、他企業とのユニークなコラボや積極的なSNSの活用で、注目を集めている。今年はついに女性アイドルともタッグを組み、さらなる快進撃を開始。神戸が誇る渋い名店に何が起きているのか。昨年、3代目社長に就任した山田勝宏さんは「とにかく楽しいことをやりたい。失敗したら、やめればいいだけですから」と明るく笑う。

山田製玉部は1952(昭和27)年、神戸で創業した玉子焼き・厚焼きメーカー。寿司店やおせち料理用の商品を中心に、料理文化を「玉子」の面から支えている。

創業以来、多くの料理店の玉子焼きを“陰”で作ってきたが、2017年に山梨県の駅弁の名店「丸政」と作った「神戸厚玉サンド」が大ヒットしたことが転機に。神戸を代表するパン店「イスズベーカリー」をはじめ、玉子サンドのコラボが続々誕生。今年の5月からは、全国に展開する「丸福珈琲店」でも、山田製玉部のだし巻き玉子をパンで挟んだ「ダシマキタマゴダケ」などが新メニューに加わった。

コラボは玉子サンドにとどまらない。

アイドルユニット「あヴぁんだんと」の元メンバーで、現在はアパレルブランド「NARUHESON;S(ナルヘソンズ)」も手掛ける宇佐蔵べにさんが、山田製玉部をモチーフにしたパーカーやTシャツ、キャップなどを制作。「YAMAHESON;S(ヤマヘソンズ)」名義で販売も始め、人気を博している。

さらには新進気鋭のイラストレーターに絵を描いてもらったり、神戸のアウトドアメーカー「神戸ザック」と一緒に保冷バッグを作ったりと、“玉子焼き屋”の枠を飛び越えて活動の範囲をどんどん広げているのだ。

現社長の勝宏さんは、祖父が立ち上げた家業を継ぐことを決めて20代半ばで入社。「これからは毎日ひたすら玉子を焼いてお寿司屋さんに届け続ける人生が始まるのか…」と最初は正直やや退屈に思わないこともなかったというが、次第に「面白いと思うことはなんでもやったらいい」という先代(父)が育んできた社風に刺激を受け、「自分たちにしかできないことをやろう」と前向きに考えるように。会社紹介で有名ファッション誌に進出したり、Instagramを始めたりと、情報発信にも力を入れ始めた。

コロナ禍では、主要な取引先のひとつであるホテルからの注文も激減し、「売上の桁がひとつ、ふたつ少なくなるほど」(勝宏さん)の大きな打撃を受けたという山田製玉部。それでも受け継がれてきた味を大切に守りながら、「楽しむこと」をより強く打ち出すことで、あまり表に名前が出ない“陰”の存在だったイメージを刷新することに成功した。

コラボの企画はまだ他にも控えているといい、勝宏さんは「70年の歴史がありながら、ここまで遊べる会社はなかなかない。これからも本気で楽しんでいきます」と力を込める。

【山田製玉部公式サイト】https://yamadaseigyokubu.com/

【山田製玉部Instagram】https://www.instagram.com/yamada_seigyokubu/

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