「チコちゃん」マナー講師の炎上、どう見る?識者に聞いた 「今の時流にそぐわない」

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21日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!」に鬼マナー講師として知られる女性が出演し、その厳しい指導を受けた番組スタッフが泣き出した際のやりとりが物議を醸している。ネットでは「パワハラだ」「下品なのはあなたの方では」などの声が上がり、一時、激しい炎上状態に。在阪メディアの現役プロデューサーや、メディアの専門家が問題点を分析した。

番組では「フォークの歯が4本なのは、スパゲティを上手に食べるため」という説を立証するため、歯が2〜5本のフォークを用意。スタッフがそれぞれのフォークでスパゲティを食べ、どれが最もマナー的に良く食べられるかを実験した。その際、マナー講師から強い言葉でダメ出しを連発された女性スタッフが涙を見せ、「泣くな! ええ年して」と一喝される場面があった。

番組作りにハラスメント防止などの厳しい社会的規範が求められるようになっている今、これが視聴者やネットユーザーの顰蹙(ひんしゅく)を買った。バラエティ番組などの現場を知る放送局関係者が語る。

「局内で制作サイドが9割方、企画やキャスティングを決めている段階で、直前になってコンプライアンスを担当する部署からNGと言われてひっくり返るケースもあるなど、現場はかなり神経を尖らせています」。こうした空気を息苦しく感じ、「(コンプライアンスで)がんじがらめになってテレビでは自分たちのやりたいことができない」とYouTubeやラジオなどに活路を見出す芸人も少なくないという。

今回の「チコちゃん炎上」について、在阪のバラエティ番組を担当するあるプロデューサーは「番組作りでは決まっている台本の通りに出演者に“演じてもらう”ことも多い。今回の件も、制作側の演出に(鬼マナー講師が)うまくハメられた部分もあるのでは。ただ、NHKがやる演出としては意外だった」と驚く。

毎日放送(MBS)の元プロデューサーで、メディアに関する著書も多い同志社女子大学メディア創造学科の影山貴彦教授は「この種の演出が、今の時流にそぐわないのは明らかです。『チコちゃん—』は私も好きでよく見ていますが、作り手はもっとしっかりアンテナを張るべきでした」と話す。

一方で、マナー講師の女性の言動に批判が集まっていることについては「私もかつて制作サイドにいたからわかりますが、バラエティ番組などで毒舌役やヒール(悪役)を演じる人というのは、普段は人当たりがよく、物腰も穏やかな人が大半です。彼女は他の番組などでもあの“鬼キャラ”で人気を博しており、おそらく今回も与えられた役割を忠実にこなしただけ。今回のケースはあくまでも作り手の判断ミスであり、彼女個人を攻撃するのは筋違いです」と釘を刺す。

また「叱られたスタッフが泣き出す」という“アクシデント”に関しても、影山教授は「例えば彼女に叱られるのがスタッフではなくプロの芸人さんだったら、受け答えひとつでちゃんと笑いになっていたでしょう。スタッフを演者として出すのは経費削減の影響があるのかもしれませんが、そのあたりの判断も間違っていたと言わざるを得ません」と指摘しつつ、「とはいえ、番組の作りとしては最終的に褒められて大団円になっていましたから、本来であれば視聴者やネットユーザーも『ネタとしては行き過ぎだったね』くらいで済ませておけばよく、さらに燃料を足して“火”を大きくするのはそれこそ行き過ぎです」と過剰な反応に注意を促した。

NHKの広報担当は「ネットで話題になっていることは認識しているが、個々の番組にどのような意見や苦情が寄せられているかは現時点では把握していない」としている。

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