「障がいはあるものの、障がいと思わない、思わせないようにすることが大切だと思います。人の世界でも同じ。大切な命ですから、個性豊かに生きてほしい」
そんな言葉を愛猫モグちゃんに注ぐのは、飼い主のmisuzu08251019さん。
飼い主さん宅には、様々な事情でお迎えした6匹の保護猫が。モグちゃんは姉妹猫と共にカラスに攻撃され、重傷を負っていた子。一時は獣医師から安楽死を勧められたほどでした。
カラスに攻撃されていた子猫を家の裏で保護
モグちゃんは、飼い主さんのおばあさんが家の裏で出会った子。茶トラの姉妹猫と一緒にカラスに囲まれ、突かれていました。
事態を知った飼い主さんはサビ猫が好きなこともあり、その日のうちに対面。その時に、モグちゃんが怪我を負っていることを知りました。
すぐに動物病院へ連れて行くと、縫合手術を受けることに。しかし、術後の経過は良くなく、怪我の状態は悪化する一方…。やがて、獣医師から治療は限界だと告げられ、「翌週までに安楽死か、自然に力尽きるまで自宅で診るかを決めてください」と、命の選択を迫られました。
「安楽死では眠らせて、苦しまないようにすることや具体的な料金の説明を受けました。生まれて1カ月経ち、よくご飯を食べるようになってきて、名前だってきっと分かっているのに」
家族みんなで大切に診てきた、この命が来週には消えてしまうかもしれない悲しさや、どれほど泣いても、もう治療をしてもらえない歯がゆさ。
そんな苦しみでいっぱいになった飼い主さんは、「もしかしたら、カラスにやられて死んだほうが苦しまなかったのではないか」と思いながら、その日の治療費を支払いました。
しかし、その時、頭に浮んだのは、かつて瀕死状態だった愛猫を助けてくれたことがある、隣県の動物病院。
「モグの辛さは分かりませんでしたが、たくさんご飯を食べて元気でしたので、なんとか生かしてあげたい、もっとご飯を食べさせてあげたいと思いました」
そこで、一縷の望みを託し、転院。転院先では縫合された頭部の抜糸が行われ、高カロリーの食事をあげるよう、指示を受けました。
「検査に時間がかかった記憶があります。傷口には、消毒と薬を塗布していただきました」
治療中、印象的だったのは獣医師がカルテに描いたモグちゃんの似顔絵があまりにも下手で、モグちゃんを抱えながら笑ったこと。
「モグを引き取ってから、初めて笑ったのがこの時だったんです」
その後、モグちゃんは患部に消毒や軟膏を塗布し続けながら、飲み薬の抗生剤を服用することに。自宅には先住猫がいるため、飼い主さんは治療中、頭部の怪我が悪化しないよう、普段はケージで過ごしてもらい、遊ぶ時は必ず傍で見守るようにしました。
そんな生活を続けていたところ、怪我は徐々に治癒。ミイラ化していた片耳はかさぶたと一緒に取れてしまいましたが、モグちゃんは普通の暮らしができるまでに回復しました。
ちなみに、一緒にカラスに襲われていた姉妹猫は、飼い主さんの従兄弟が引き取り、大切に育てているのだそう。
「生きてほしい」と願った人たちの優しさにより、死の縁にいた2つの命は救われたのです。
10年が経ち、甘えん坊なかわいい猫に
それから時は流れ、モグちゃんは現在、10歳。
「今、聴力はどのようなのかは正直分かりません。ただ、はっきりとは聞こえていないと、以前、説明されています」
顔面の傷跡に被毛がないため、時折、怪我をしてしまうことはあるものの、健康状態は良好。
小さな頃に怪我をしたからか、体格は小さめですが、時には同居猫に喧嘩を売りにいくこともあるのだとか。
「とても甘えん坊で、私の上で他の猫が寝ていると、怒りながら場所取りをするほど気が強い面もあります(笑)」
モグちゃんは縫合手術によって目がつりあがったため、眼球が乾いてしまうことがあるので、飼い主さんはそばで寝ている時、手のひらで優しく目を閉じてあげるのだそう。
「目を閉じたい時は、自ら顔をつけてきます。モグには、どこにでももぐってしまう癖があり、そこもかわいいです」
「外の生活を知っているので、狩りは得意。殺虫剤を買わなくても、自宅の虫退治は大丈夫です(笑)。私は、猫たちが私たちを家族だと思ってくれているのならば、心や体の傷は癒せると思っています」
モグちゃんのように見た目で障がいが分かる子は「怖い」と思われることも少なくありません。そのため、飼い主さんは現在、通院時には周囲に顔が見えないよう、配慮しているそう。
しかし、この先、猫の障がいへの理解が進み、見た目だけでその子を判断しない人が増えていけば、障がいの有無に関係なく、「かわいい」を向けられ、愛される子は増えていくはず。
可哀想でも怖いでもなく、純粋に、「かわいい」。そんな一言が、モグちゃんにもたくさん注がれる社会になることを心から願っています。