廃業の危機に休学した息子→「応援してほしいです」とありのまま投稿 四重苦の「ぽんせん」製菓会社に起こった優しい反響

塩屋 薫 塩屋 薫

「正直に話します。よかったらマルサ製菓を応援してほしいです」とツイートしたのは、兵庫県朝来市で昔ながらの焼菓子・ぽんせんを作る「マルサ製菓」。3代目が大学を休学して会社の苦境を支える状況を赤裸々につづったことから、「がんばってください!」と応援の声が広がっています。同社の担当者に話を聞きました。

焼き上がる時の空気の抜ける音から名付けられたというぽんせんは戦後、主に大阪や姫路などの駄菓子屋で売られてきたそう。同社では昭和35年の創業以来、小麦粉や醤油などで作られる素朴な味わいが魅力ですが、ファン層の高齢化による知名度の低下、原材料高騰による値上げにより、売り上げや生産力は全盛期の4分の1と言います。

Twitter担当の佐賀建斗さんによれば、2017年に2代目の父親が家業を継いだ際には既に赤字経営、2年後には火事により製造機械の焼失や損傷という苦境に。そんな中でも父親が資金をかき集め、不足した機械の分を母親と手動作業で補っていたそう。けれど1年前に母親が脳幹出血で倒れてしまい、コロナ禍で取引先は全盛期より半分以下に。そこで、佐賀さんは大学を休学し1年間ほぼ休みなしで菓子業界のノウハウを学び、父親とともに働いています。

そんな佐賀さんの現状に、応援の声が多数寄せられました。

「ぽんせん!子供の頃よく食べてました!思い出させてくれたので明日見つけてみようと思います」
「微力ながらお試しセット購入しました」
「これどこで買えますか?」
「買わせて頂きます。関東在住ですが、すみません。知りませんでした」
「昔ながらの製法を大切にされているお菓子大好きです。中の方たくさんの努力をされて頑張っているんですね」

投稿した思いや反響について佐賀さんに話を聞きました。

――多くの応援の声が寄せられていますね!

通販サイトの反響がすごいです。約4カ月分の注文が3日ほどで入り、新規のお取り引きさまも増えました。「懐かしい」「食べたことがある」「応援したい」などのお声がとてもうれしかったです。

――大変な状況が続いているのですね。

昨年母が倒れ、一時は意識不明の重体で医者からも「今晩が山です。もし意識があっても歩けない可能も」と言われ、現在は家でリハビリ中です。

――今回のツイートをされたきっかけは?

約1年間ぽんせんの製造、広報をするなかで、ぽんせんって魅力があるすばらしいお菓子だなと。まだまだ多くの人に愛されるお菓子だと思うのですが、どれだけいい商品でも知名度がなければ売れない。どれだけいいものを作る会社でも知名度がなければ廃れる。それに加えて、うちは火事、母の病気、コロナの影響、原材料の高騰の四重苦。復興のためにはいろんな人に知ってもらい、よければ応援してもらえればと、ありのままの状態を投稿しました。

――休学をされてまで家業を支えようとした思いとは?

火事の時は父の「大丈夫、心配するな。学業に専念しろ」という言葉を信じて学びを継続しました。しかし運営の半分以上を担当していた母が仕事をできなくなると経営存続が危機に。小さい頃から食べてきたぽんせんをなくしたくない!との気持ちで、手伝いを決意しました。

――ぽんせんの魅力について教えてください。

基本的には素朴でシンプルな味付けです。昔のお菓子なので保存料などは使わず、弊社のいちばんいいところは砂糖を使っていないところです。ものによっては無添加の商品もあります。

ただ、今では製造している会社は非常に少なくなってしまっており、マルサ製菓のように昔ながらの手法で作り続けている会社は大変珍しいです。

――今後の展望や夢は?

販売店は全国ですがなかなか販路拡大が進まず、3月にオンラインストアを立ち上げました。ぽんせんの知名度を上げ、全国区のお菓子にしていきたいです。そのなかでも地域に密着した会社として誰もが安心して食べれる菓子を作り続け、ぽんせんを後世に残したいです。

◇ ◇

「マルサ製菓」のぽんせんは丁寧な手作業も多く、醤油が充分に塗れていない部分へのハケでの塗り直し、乾燥機からの取り出しなど、1枚1枚点検するそう。定番商品は昔ながらのしょうゆ味ですが、ほかにも地元・朝来で採れた岩津ねぎを使った「サラダ岩津ねぎ味」や「ピリ辛一味」「丹波黒大豆」などもそろい、味のバリエーションも楽しめます。

「マルサ製菓」
公式Twitter https://twitter.com/marusaseika_pon
公式サイト http://www.marupon.jp/index.html
公式オンラインショップ https://marusaponsen.base.shop/

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