名古屋で35年! メタルバンドOUTRAGEの歴史がコミカルな青春映画に 

石井 隼人 石井 隼人

味噌カツ?手羽先?シャチホコ?いや、名古屋にはOUTRAGEがいる!NAOKI、阿部洋介、安井義博、丹下眞也からなるMADE IN NAGOYAのヘヴィメタルバンドOUTRAGE結成35周年を記念したプロジェクト映画『鋼音色(はがねいろ)の空の彼方へ』(5月20日名古屋先行公開、6月3日より全国公開)がついに完成した。

斬新なヘヴィメタル伝記映画の誕生!?

音楽評論家・伊藤政則氏が原案を手掛けた本作は、大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』のように史実を大まかなストーリーにした伝記映画とは一味違う。物語の舞台はOUTRAGEのホームグラウンド・名古屋。そこに4人の若者たちがOUTRAGEのヒストリー映画製作のために集められる。OUTRAGEもヘヴィメタルも知らない彼らだったが、バンドの35年間の紆余曲折を追体験していく中でOUTRAGEの不屈の魂に触発され、諦めていた夢に向かって前進していく。

映画ではOUTRAGEの歴史を劇中劇として描きながら、メンバーを演じる4人の若者たちの群像劇にもフォーカスを合わせる。コミカルな場面も多く、OUTRAGEファンはもちろんのこと、ヘヴィメタルに詳しくなくとも楽しめて胸アツになる、一風変わった娯楽青春ヘヴィムービーとなった。

バンド結成35周年にして最高の初体験

伊藤氏はOUTRAGEデビュー当時からそのセンスを高く評価し、世に送り出した人物のひとり。そんな伊藤氏の「OUTRAGEは不器用なバンドだからこそ、音楽以外のところでも面白い挑戦ができるのではないか?」というコンセプトのもと、今回の映画化プロジェクトが始動。名古屋を拠点に活動するバンドのスピリットを製作面にも反映すべくキャストやロケーションも名古屋にこだわり、監督はOUTRAGE映像作品のほとんどを手掛けてきた山田貴教が務めた。

「あるとき伊藤さんが『おい丹下、映画を作るぞ!』と突然言い出して…。僕らメンバーとしては『?』しかありませんでした」。伊藤氏による鶴の一声を聞いた瞬間を振り返るのは、ドラマーの丹下眞也。しかし作品が完成した今、「バンド結成35周年にして、最高の初体験をさせてもらいました!」と手応えを得ている。

本作製作を応援するクラウドファンディングでは400万円超の支援が集まった。「この結果は本当にありがたいこと。作品が大都市だけではなく全国各地に広がってほしいというメタルファンの願いの結果であると思います」と感謝しきりだ。

PANTERAダイムバッグ・ダレル交流秘話

映画にはバンドメンバー全員がゲスト出演。丹下は「嬉しいやら恥ずかしいやら、自分の前で自分役の人が演技をしているなんて。劇中で僕を演じている秋田卓郎くんが『丹下くん』と呼ばれる場面では、『なんですか?』と返事をしそうになったりして」と照れながら「丹下と可那子(SKE48の末永桜花)との甘酸っぱいシーンでは自分が本当に惚れてしまったかのような錯覚に陥っただけでなく、SKE48の活動まで調べてしまいました。今では桜花さん推しです!」と物語の世界にすっかり没入したという。

PANTERAの名ギタリスト、ダイムバッグ・ダレルとの交流の一コマも描かれる。OUTRAGEは1992年のPANTERA初来日ライブでオープニグアクトを務めている。「PANTERAは当時アメリカで最も売れていたメタルバンドにもかかわらず、ギターのダイムバッグ・ダレルは本当に優しく、気のいい兄ちゃんのようでした。彼が宿泊するホテルで部屋飲みをした際には、ロブ・ハルフォードとの発表前の楽曲『Light Comes Out Of Black』を聴かせてくれたり、自分のタバコの箱をちぎってそこに電話番号を書いて『コレクトコールでもいいから、困ったらいつでも連絡をしてくれ』と気遣ってくれたり。それから4年後にL.Aでレコーディングをした際に彼のところに遊びに行ったら、アポなしにも関わらず『OUTRAGEが来たぞ!』とすぐに受け入れてくれました。OUTRAGEでいつかPANTERAの『CEMETERY GATES』をカバーしてみたい」と今は亡きダイムバッグのフレンドリーな姿を懐かしむ。

映画館の大音量でOUTRAGEの楽曲を堪能してほしい

映画公開に先んじてリリースされたサントラ的なベストアルバム『SQUARE,TRIANGLE,CIRCLE&FUTURE』も好評。劇中にはOUTRAGEのラウドな楽曲も多数使用されている。「自分たちのどの曲がどんなところで使用されているのかドキドキしましたし、自分の想像を超えたところで楽曲が使用されていたりするのでワクワクしました。自分たちの楽曲なのにまるで一リスナーのような新鮮な気持ちで聴くことができたので、みなさんにも映画館の大音量でOUTRAGEの曲を堪能してほしい」と期待する。

映画公開前哨戦として、初のフルオーケストラライブを地元・名古屋で成功させたばかり。「結成40周年、50周年と、これから先のOUTRAGEの行き先についてはあえて設定していません。大切なのは、歩みを止めないこと。転がり続ければ必ずどこかに辿り着く。そこが目的地でないのであれば、また転がればいい。まずはこの映画がどこまで広がるのか、それは作品に関わってくれたスタッフ・キャスト、そして僕らOUTRAGEにとっても重要なことです。一人でも多くの方に見ていただき、大ヒット御礼ライブが出来ればサイコーですね!」と祈願している。

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