肺結核がまだまだ死の病だった昭和初期に作成された「職業に依る肺結核死亡率」がSNS上で大きな注目を集めている。
「昭和元年の『職業に依る肺結核死亡率』はいいんだけれど、グラフがお墓。」
とこのグラフを紹介したのはフリー校正者のPICOROCOさん(@aof1080)。
悲惨な状況を笑い飛ばそうという意図か、なぜかグラフがお墓の形だったり各職業の挿絵が妙にコミカルだったりと気になるこのグラフ…。PICOROCOさんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「これデザインした人『俺って天才じゃね!』とかノリノリで描いていたんだろうなとは思う」
「公務自由業という 自由なのか縛られるのかよくわからない職業」
「俺が現在進行形でやってる仕事が一番死亡率低くて草
うれしいぜ」
「当時の『無職』は今とは意味合いが違っていて、
主に農村の寄生地主などのことです。
働かざるもの食うべからずと指弾されていた存在。」
など数々のコメントが寄せられている。
PICOROCOさんにお話をうかがってみた。
ーーこのグラフはどんな書籍に掲載されていたものでしょうか?
PICOROCO:記事は戦前の雑誌から切り取ったイラストやグラフィックの多いページを誰かがまとめたもので、正確には発行年も出版社もわかりません。おそらく「キング」(講談社)ではないかと思われますが、不確かです。ページの柱に「健康増進衛生知識大画報」とあるので、そういった特集号があったのかもしれません。あるいはその号にそういったタイトルの特集ページがあったのかもしれません。この記事はその中の「結核予防法」と題されたページに載っているものです。
ーーこのグラフをご覧になった際のご感想をお聞かせください。
PICOROCO:現代では「不謹慎、悪趣味」など、炎上必至と思われるグラフィックを用いたグラフであるのに驚いたことが当初の感想でした。
また現在のコロナの感染状況と比較して漠然と興味を感じたり、十代~三十代の死亡者数が突出して多いのに驚いたり、クレジットの「林唯一」は当時人気のあった挿絵画家で、デザインについてはすべてお任せしたのだろうかと想像したり、さまざまな思いが巡りました。
ーーこれまでのSNSの反響についてご感想をお聞かせください。
PICOROCO:「やっぱり無職(高等遊民)が最強だね」という感想、「女性の工業が多いのは…」という考察などが興味深かったです。
◇ ◇
「このグラフについて個人的に調べたり検証したりしたわけではなく、あくまでもおもしろいネタとして提示しただけなので、グラフの意味や信憑性などについては不明です」とPICOROCOさん。PICOROCOさんが発見した資料には「職業に依る肺結核死亡率」のほかにも「両親の社会的地位と子供死亡率」「飲酒家の家庭に於ける子供の死亡率」などさまざまなグラフが掲載されていて興味深い。
みな約100年前のものだということに加え、切り取られてしまっているので検証は難しいが、ただ一つこれらから確実にわかることは時代によって大衆の感覚や興味の対象は大きく変化するということだろう。
PICOROCOさん関連情報
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