「【業務連絡】給湯室にナマコを置き忘れた社員へ」ーーこんな投稿が今、Twitter上で話題です。投稿したのは鋳物メーカー「木村鋳造所」(本社、静岡県駿東郡)。「会社にナマコというありえなさで大笑いしてしまいました」という同社Twitter担当者に電話で話を聞きました。
ナマコの主が判明…ネット感動
2月7日朝、本社勤務の社員が給湯室でナマコを見つけます。「給湯室にナマコがあるよ」。Twitter担当者は同僚からの勧めもあり、写真を撮り同社公式Twitterアカウント(@KimuraFoundry)で呼び掛けます。
「【業務連絡】給湯室にナマコを置き忘れた社員へ あなたのナマコが冷蔵庫で待っています。名乗り出なくて良いのでナマコを忘れずに取りに来てください」
昼過ぎ、Twitter担当者が再び給湯室の冷蔵庫を覗くと「増えてる…増えてるよ…」。ナマコの入った袋は全部で7つに増え「冷蔵庫がナマコだらけ」の状態に。
ここで同僚たちから「ナマコを置き忘れた社員」の正体を知らされます。
ナマコの持ち主は、勤続45年の営業担当の男性社員。翌日から退職前の有給休暇に入るのを前に「おいしいナマコをみんなに食べて欲しい」という思いから持参した品でした。
今回の出来事は同社給湯室や公式Twitter上で「退職の挨拶にナマコ」「ナマコに込められた愛」「45年分の想いがナマコに...」「菓子折りじゃなくナマコ」といった数々のパワーワードを生み、盛り上がりを見せました。
贈り主の退職する社員さんとは、どんな方なのでしょうか。「海や釣りが好きな方です。おいしいナマコが手に入ったからとみんなに置いていってくれたんだと思います。(Twitterでバズったことは)最終出社日に伝えるつもりですが、Twitterなどやらない方なので『うん?そう』とあまり興味を示さないと思います」
ナマコはその後、腕に覚えのある料理好きやナマコが好物だという社員らがありがたく持ち帰ったそうで「それぞれの家庭でまだ調理中」なのだとか。Twitter担当者にも味の感想を求めると「料理が苦手で…」と苦笑。「社内にさばき方を知る社員が多く驚きました」
投稿はひと晩でいいねが1.7万を超え、「いい会社だ」「ほのぼの」「ナマコの恩返し」「オチが…笑」「高級食材、すごい」などの声が寄せられています。Twitter担当者が同僚に「このツイート見て!スゴいでしょ!?」と画面を見せると「すごい!ナマコの写真がほんとにきれい!」。「製品の品質を見るような目線でほめられた」といいます。
身近にあるかも?木村鋳造所の技術
過去に「国立科学博物館にある緑の地球儀、品川駅の港南口にあるハートの塔を作った鋳物屋です」とツイートしたこともある同社。今回の話題で同社の名前を知った人も多いのではないでしょうか。
同社は大型鋳物の製造で知られており、特に自動車ボディプレス金型用鋳物は国内シェア4割超。「街中で走っている車はほとんど」と言っていいほど、国内のほぼ全ての自動車メーカーと取引しているそうです。
同社が導入する鋳物の工法「フルモールド鋳造法」は、3Dデータを駆使して発泡スチロールで模型を作り、砂に埋め、溶かした鉄を流し込み、模型を気化させて鋳物を作るというもの。この模型作りの技術が買われ、最近ではイベント用の発泡スチロール模型も多く手掛けます。世界的なファッションブランドの店内装飾や国内の有名テーマパークの立体装飾、コンサート会場のセットなど。「20メートルサイズまで作ることができます。具体的な名前を言えないのがもどかしいです」
Twitter担当者は「木村鋳造所の製品のほとんどは公表できません。世の中にはそういった表に出ない仕事をして、社会を支えている人たちがいることを知っていただければうれしいです」としています。