小さな入れ歯がカチカチと開閉する魔改造目玉クリップがTikTokで話題です。
投稿したのは、歯科技工所「タイデンタルラボ」(大阪府豊中市)の歯科技工士、森島さんと林さん。手のひらにちょこんと乗るそのシュールで衝撃的なビジュアルに、コメント欄には、
「これのガチャがあったら絶対にする」
「羨ましい!理想の歯並び!」
「さすが技工士さんですね!仕事の精度がえげつない」
といった称賛と共に、「ほしい!」という声が続出。2.9万件を超えるいいねが押されています。
実はお二人、クリップの他にも「入れ歯のボールペン」「ちっこい入れ歯のピンバッチ」なども制作していて、ネットショップ「BASE」で出品しています。あまりの反響に現在は再販待ちとなっていますが、そもそもなぜ魔改造を始めたのでしょうか?森島さんたちに伺いました。
――まさに魔改造ですが、小さい入れ歯を作られたきっかけは?
以前から趣味でハンドメイドアクセサリーをつくっていたのですが、あるとき、「小さな入れ歯をアクセサリーとしてつくってほしい」と依頼されたんです。それで試しにつくってみたらかわいいと思えて。最初はピンバッジに加工して白衣に付けていました。
――インパクトがありますね。
得意先の方たちの反応も良かったんですよ。そこで、普段づかいするもので加工できないかと考え、クリップやボールペンの改造を始めました。
――ネットショップ開設は、やはりSNSの声などを受けて?
そうですね。初めは趣味やSNSのネタでしかなかったのですが、まわりの方やSNSでの反応がどんどん良くなっていったのでショップを開設することにしました。ただ、あくまで本業は歯科技工士ですので、空いた時間に制作しています。数が揃えば出品するという形なので、不定期販売になります。
――制作時間はどれくらいかかるのですか?
クリップ、ボールペン共に、ひとつあたり30分~40分といったところでしょうか。そもそもの機能を阻害せず、かつ目立つように心がけています。
――クリップとボールペン以外には、どんな商品が?
先ほどのピンバッジの他、マグネットや穴あきサンダル用のアクセサリーなどがあります。新商品はまだ決まっていませんが、しょうもないことが好きなので、何かないかと常に考えております。
――投稿が大きな反響を呼びました。
歯科技工士は、社会的評価の低さやなり手の減少、高齢化などにより、年々数が減っています。ただ、それをネガティブに考えていても仕方がないので、私たちは楽しみながら本気でしょうもないことをしていこうと思っています。入れ歯のクリップやボールペンを見て、「なんかおもろいことしてる」「歯科技工士って楽しそう」など、わずかでも興味を持っていただけたら…と、SNSで発信するようになりました。
――職業を知るきっかけとしての魔改造なのですね。
そうですね。あともうひとつ、アナログの良さを伝えたい想いもあります。歯科技工士業界もデジタル化が進み、便利になりました。ただ、それと併用するアナログにも「ならでは」の良さがある。それを伝えられたらと思い、手づくりにこだわったものづくりをしています。
――歯科技工士という仕事への誇りを感じます。
一人ひとり症例や悩みが違う患者さんのことを考えながらつくった入れ歯によって「食事ができるようになった」「笑って話せるようになった」といったお声をいただけたときは、とてもやりがいを感じます。今回の記事を通して、歯科技工というものに興味を持ってくださる方が少しでも増えれば幸いです。
タイデンタルラボさんのSNSアカウントでは、アクセサリー用をはじめ、様々な入れ歯の制作風景も掲載されています。プロフェッショナルたちの本気も遊び心も覗き見えるアカウント。興味のある方はぜひ訪問してみては?
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