クラッシュ症候群に大切なのは「早期発見」「早期治療」 阪神・淡路大震災でわたしたちが学んだこと

ドクター備忘録

尾原 徹司 尾原 徹司

 1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生してから27年が経ちました。未曾有の被害をもたらしたこの大震災でその名が知られるようになったのが「クラッシュ症候群」です。「クラッシュシンドローム」とも「挫滅症候群」とも呼ばれています。

 当時、多くの人が建物や瓦礫(がれき)の下に埋もれ、懸命の救出作業が行われました。しかし、せっかく救出したにもかかわらず、数時間後、症状が悪化したり、亡くなったりする人が少なくありませんでした。その原因がクラッシュ症候群だったのです。

 長時間の圧迫から解放された後に、血流を通じて壊死などによって生じた毒性の高い物質が急激に全身に広がり、心臓の機能を悪化させたり、腎不全を引き起こしたりしたのです。クラッシュ症候群の場合、最初は症状のないケースが多く、意識も明瞭で一見軽症に見える人も危ないのです。

たとえば、
▼数時間以上、腰、腕、腿などが瓦礫の下敷き状態であった患者さんは要注意。
▼軽度であっても筋肉痛や手足のしびれ、脱力感などの症状がある場合も要注意。
▼脈が速くなったり、弱くなったり、顔面が蒼白になるとか、意識がもうろうとなる場合も要注意。
▼尿量の減少、血尿など尿にも注視すること
など。

 大震災で学んだことは救出から治療を始めるまでの時間が明暗を決めるため、いかに早く助け出すかが課題です。また、救出された後は血液透析など早期の治療が重要です。

 現在は、このクラッシュ症候群に配慮して長時間、建物などの下敷きになった人に対しては、医師が救助隊員とともに現場にかけつけ、救出活動と同時に治療することも珍しくなくなってきました。「早期発見」「早期治療」が何よりも望まれるのが、このクラッシュ症候群なのです。

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