コンビニの外にいた捨て猫
ぽんちゃん(5歳・オス)は2016年12月、兵庫県神戸市内のコンビニ、ローソンの外にいた。外に置いてあった発泡スチロールの箱の中にいれられていて、そのときはまだ子猫だった。ある日、ぴょんと飛び出てコンビニの中に入ろうとしたが、店員に箱に戻されたという。
たまたまコンビニに行ってその様子を見ていたKさんは、店員に子猫のことを聞いてみた。誰かが箱の中に入れて捨てていったようだった。ニャアニャア鳴いている子猫を不憫に思った店員は、何度かごはんをあげたが、連れて帰るわけにもいかず、かといって放っておくわけにもいかず困っていた。
ぽんちゃんの片目は潰れていたが、衰弱しきっているような状態ではなかった。Kさんはそのまま放っておけず、「うちに来る?」と聞くと、「にゃあ(行く)」と返事をしたので、店員に断って連れて帰ったという。
人懐っこい子猫
動物病院に連れていき、しばらく治療したら、目ヤニは治らなかったが、両目とも無事だった。「妻が保護しなかったら誰かが保護していたかもしれませんが、あのタイミングで保護して病院で治療していなければ、片目は潰れたままだったかもしれません。そう思うと、後先考えずに保護しましたが、結果的に良かったのだと今では思っています」と振り返ったのは、Kさんのご主人。
K夫妻は、前から猫を飼おうと思っていたわけではない。ぽんちゃんを保護して、当然のように飼うことになったという。ポンちゃんは人に慣れていたのか、すぐに膝に乗ってきた。「おかげで私の膝はダニで真っ赤に腫れてしまったのを今でもよく覚えています」。ご飯もしっかり食べて、ポンちゃんは保護して数日で元気になり、猫じゃらしで楽しそうに遊べるようになった。ローソンで保護したのでローソンのキャラクターのぽんたにちなんでぽんちゃんと名付けたそうだ。
猫を飼って世界が広がった
ぽんちゃんはとても穏やかな性格だった。Kさんは、壁や柱などをバリバリされるだろうとあきらめていたが、ほとんどバリバリすることはなかった。キャットタワーの爪とぎでバリバリした。
「良い子です。私たち夫婦の子どもが産まれた時もおびえたり嫉妬したりすることなく、遠巻きに見守ってくれていました。子どもが大泣きしていると、ぽんちゃんが心配そうに様子を見にきてくれます」。
ぽんちゃんを迎えてから、Kさん夫妻は夫婦の会話が増えたという。ぽんちゃんに合うキャットフードを探すなど、ぽんちゃんを通じて共通の目的ができたように思うそうだ。Kさんの夫は、コロナ禍で在宅勤務になり、ぽんちゃんに邪魔されながら仕事をしていた。その様子を「威力業務妨害で逮捕」というニュースのパロディ動画にしてYoutubeに投稿したところ、70万回も再生された。
「その後も定期的にぽんちゃんの動画を作り、Youtubeに投稿しています。ぽんちゃんを通じて多くの視聴者の方と繋がることができました。ネコを飼うことで、自分の世界が広がったなと感じています」