体力の低下とともに病気のリスクが高まるシニアの猫ちゃん。特に冬場はその環境が原因となり体調が悪化することもあります。では一体、冬場はどんなことに気をつけて生活をすれば良いのでしょうか?お家で簡単にできる対策をご紹介したいと思います。
【ポイント】
・シニア猫ちゃんは、慢性腎臓病になる確率が高い
・冬は水が冷たくなりやすく、水分摂取が減りがち
・飲水をうながすには、水温と、水飲み場の場所が大事
10歳以上の高齢の猫ちゃん(以下、シニア猫ちゃん)の30~40%が罹患していると言われる慢性腎臓病、年齢とともにその罹患率も上がりシニア猫ちゃんの死因としても多い病気です。
そんな慢性腎臓病ですが、比較的初期の段階から薄い尿を大量に排泄するいわゆる「多飲多尿」症状が見られます。多飲多尿と聞くと水をたくさん飲むのでたくさんの尿をすると思われがちです。しかし、実は腎機能障害から薄いおしっこを大量に排泄しないと老廃物を排出することができないので順番としては多尿→多飲になります。ではこの慢性腎臓病が冬場とどう関わってくるのか考えていきましょう。
冬の冷たい水は、猫ちゃんにとって飲みにくい
普段の生活でも高齢になると寝ている時間が長くなる傾向がありますが、冬場では顕著にその活動性が落ち、暖かいところで丸くなって寝ていることが増えます。また高齢で関節疾患を抱えている猫ちゃんでは関節の痛みから余計に動きたがらないこともあります。そういった状況に加え、冬場はその気温から水が冷たくなりやすいので、冷たい水を嫌う猫ちゃんはあまり積極的に水を飲まなくなります。
先にお話ししたように腎臓病ではどうしても多尿になるのであまり水を飲まないと簡単に脱水傾向になってしまいます。つまり冬場にあまり水を飲まないと脱水が進み、腎臓病を悪化させてしまうことにもつながります。ではどんなことに注意すれば良いのでしょうか。
猫ちゃんが好きな水温は、38℃
飼い主さんが適温と感じるよりも少し暖かめの室温を好むと言われていますのでまずは暖房などで室温を保ってあげましょう。
また、飲み水の温度として38℃前後のぬるま湯を好む猫ちゃんが多いと言われており、こまめに温水に交換するとより飲んでくれるようになるかもしれません。関節炎がある猫ちゃんでは水飲み場まで距離があると痛みから足が遠のいて飲まなくなってしまうこともあるので水飲み器は複数個、極力段差がないさまざまな場所に用意してあげることが大切です。
また、こまめに飲み水の確認をすることで水の減りが早いことに気づけるかもしれません。一度失われてしまった腎機能は二度と回復をしないため、初期段階の多飲多尿を発見し早期発見・早期治療することがとても大切になります。
病気自体は仕方ないですが、おうちの環境を改善するだけで病気の悪化を予防できることもあるのでぜひ実践してあげてください。
◆長谷川 諒(はせがわ りょう)京都府京都市出身。1992年生まれ。北里大学獣医学科卒。Ani-vet代表、ヤマザキ動物専門学校講師、保護施設専門往診病院「レイクタウンねこ診療所」院長。首都圏(東京都・埼玉県)を中心に動物病院での診察も行う。保護猫活動を支援する傍ら、現役獣医師によるメディア媒体での知識の啓蒙に取り組んでいる。愛猫ちゃんのためのお役立ちビデオ講座『ネコデミー』でも講師を務める。
【Ani-vet 代表】
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