愛犬の面影を求め、シニア犬のお世話を誓った息子たち「幸せな時間をたくさん作ってあげたい」

岡部 充代 岡部 充代

 

 ミニチュアダックスフントのミゲルくんは推定16歳のハイシニア犬。同じくミニチュアダックスのあんずくんは推定10歳のシニア犬。2匹を同時に引き取ったのは、三重県名張市に住む小泉さん一家です。ミゲルくんは子供にアレルギーが出たことによる飼育放棄、あんずくんは人間の福祉施設に遺棄されていたそうで、昨年、三重で活動する動物保護団体『わんらぶ』にやってきました。それぞれに“里親募集”をし、希望者もいたようですが正式譲渡には至らず。そんなとき、手を挙げたのが小泉さん一家でした。

 

16歳の愛犬を見送った後、息子たち「同い年の犬をお迎えしたい」

 小泉家はドーベルマンのレナちゃんを2014年に、ミニチュアダックスのリクくんを昨年12月に亡くしました。レナちゃんは12歳、リクくんは16歳だったそうです。16歳の愛犬を見送った直後に同じ年齢の犬を迎えるのは、かなりハードルが高いようですが…。

「正直、なぜミゲルくんなのかと思いました。リクが死んだとき子供たちも号泣していたので。同じ悲しみをそう遠くない将来、味わうかもしれないのにと」(父・憲治さん)

 小泉家には4人の息子たちがいて、最初は一番の動物好きである三男の与和(とわ)くんが『わんらぶ』のブログでミゲルくんに目を留めました。リクくんによく似ていたからです。その日から、与和くんは毎日ブログをチェック。同じく動物好きの四男・侃都(かんと)くんと2人、どんどんミゲルくんに引かれていきました。ただ、憲治さんは積極的になれず、もう少し若い保護猫を迎えることを提案したりしていたそうです。

 

 そんなある日、自宅から少し離れた亀山市でわんらぶも参加する“里親会”が開催されることが分かりました。ミゲルくんも参加します。息子2人のお目当てはもちろんミゲルくん。憲治さんは、他団体から保護猫も参加していると知って同行しました。「犬も猫もいろんな子を見られる里親会なら、他の子に目が行ってくれるかもしれないと思ったんですけど…」(憲治さん)

 会場に到着したのは終了5分前。息子たちはミゲルくんのもとへ直行し、猫を見に行ったのは憲治さん一人だけでした。

「わんらぶさんのブースに戻ってきたとき観念しました。トライアルどころか、子供たちはすぐにでも連れて帰りたいと言っていましたし、妻も心の中では決めていたと思います」(憲治さん)

 母の奈未子さんもミゲルくんを迎えたいと思っていましたが、一方で「仲間と楽しく暮らしているのなら、今のままのほうが幸せなのかも」という迷いもありました。ところが当日、わんらぶスタッフから「ミゲルくんとあんずくんは2匹一緒に迎えてくれる家族限定」と聞き、決心がついたようです。ずっと寄り添ってきた2匹一緒なら寂しくありません。あんずくんはわんらぶに来たときから目が見えず、耳もほとんど聞こえませんでした。肝臓の数値が悪化して生死の境をさまよったこともあります。そうしたことも全部承知の上で、小泉家は2匹のトライアルに入ったのです。

 

 ミゲルくんとあんずくんを迎えるにあたり、憲治さんは息子たちとある約束を交わしました。それは「下(しも)の世話もする」ということ。

「レナとリクのときはしなかったんです。でも2匹を迎えるとき、かわいいから、好きだからという理由だけでは飼えない。ちゃんと下の世話もできないと飼う資格はないと言い聞かせました。進んでやってくれていますよ」(憲治さん)

 2匹に愛情を注いでいるのは与和くんと侃都くんだけではありません。次男の宥仁(ゆうじ)くんはそばを通るたび「かわいいね」と声を掛けますし、あんずくんが大好きなのは実は動物の扱いがちょっと苦手な長男の慶多(けいた)くんで、家に来てすぐの頃は膝にずっと乗っていましたし、脱いだ洋服があるとその上で気持ちよさそうに眠るのだとか。

 

 16歳のミゲルくんと10歳のあんずくん。シニア犬ならではの魅力を、奈未子さんはこんな風に話します。

「生まれて来てくれてありがとう、というのは子犬も成犬も同じですが、シニア犬はそこにいるだけで奇跡。だから毎日、朝起きてありがとう。ごはんを食べてくれてありがとう。うんちしてくれてありがとう。見つめてくれてありがとう。抱っこさせてくれてありがとう。すべてにありがとう、なんです」

 そして、2匹への想いを与和くんと侃都くんも教えてくれました。

「とにかくかわいくて一緒にいたい。幸せな時間をたくさん作ってあげたいです」(与和くん)

「できるだけ幸せにしてあげて、長生きさせてあげたいです」(侃都くん)

 2匹は今、とても穏やかな日々を過ごしています。

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