税務調査にもコロナ禍の影響が…マンパワー不足に加え、新人職員に必要な現場経験ができず

北御門 孝 北御門 孝

税務調査が再開されている。10月初めから事前連絡(税務署員から税理士に電話連絡)が入り、10月の中旬~のアポイントを取って実地調査を行っているところだ。コロナ禍は税務行政にも影響しており、税務調査が長く行われていなかった。筆者は税理士事務所の仕事を始めてから30年が経過するが、こんなに長い期間、調査がなかったのは初めてのことだ。(税理士登録は平成8年だがそれ以前に事務所員として勤務していた期間がある。)

昨年の3月に法人税の実地調査を一件立ち会った。ギリギリのタイミングだったと思う。その後、今年の8月にも一件連絡があったが緊急事態宣言で延期になった。通常、税務調査の年度は6月末で終わり、7月に税務職員の人事異動があって、その後にまた調査が再開される。令和2年7月~令和3年6月の事業年度にはほとんど実地調査は行われなかったのではないだろうか。今年の10月以降、税務調査のシーズンと相まって多くの実地調査が行われているだろう。

実は「実調率」(申告を行った納税者数に対する実地調査件数の割合)は減少傾向だ。法人も個人も平成元年と比べ平成28年には半分以下に減っている。平成28年の実調率は法人で3%程度、個人にいたっては1%程度だ。これは国税の職員数がほぼ増えていないのに対し、法人数は30.8%増、個人の申告件数は27.7%増とともに増加しているため、マンパワー不足に陥っていることが大きな原因と考えられる。さらにこの度のコロナ禍によって新人職員の実地調査の現場経験がなされていない。

研修を終えた後のOTJのために、ベテラン職員は新人と組まされて教育係を務めることになる。実地調査の件数は当面伸び悩むだろう。とはいえ、コロナ禍によるシワ寄せは致し方ない。なにも税務行政だけが抱えている問題ではない。今後いかに効率をあげていくかが問われることになる。すでに将来的にはスマート化を目指すと公表されているし、一定の施策に取り組んでいる。また、富裕層や海外取引のある企業に対して情報リソースの充実・グローバルネットワークの強化で対応する方針も打ち出している。

ただし、来年から始まる電子取引のデータ保存や令和5年10月からのインボイス制度など、現場の混乱を招きそうな制度のスタートが続くのも事実だ。そして、今年12月に発表される税制改正大綱の内容が気になる。大きな改正が含まれているかもしれない。そうであれば、対策も含めていち早くご案内をさせていただきたい。

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