プロ書道家が「200円のミニチュア」で文字を書いたら→ネット驚愕「弘法筆を選ばず」「スゴ技!」

金井 かおる 金井 かおる

 「弘法筆を選ばず」ーー名人・達人は、どんな道具を使っても力を発揮する(「三省堂国語辞典第七版」)。ことわざを体現した写真が今、Twitter上をにぎわせています。

 投稿主は書道家の蒼喬(そうきょう)さん。蒼喬さんは15日、自身の公式ツイッター「書家 蒼喬」を更新。「プロの書道家が、200円のカプセルトイの書道セットで文字を書いてみました」と投稿しました。写真には半紙に書かれた「美」の筆文字とミニチュアサイズの書道セットが写っています。

 写真を見たTwitterユーザーは「プロすごいー」「美しすぎます!」「スゴ技!」「さすがです」と絶賛。3.6万以上のいいねがつき、現在も拡散は続いています。

プロも心動く「これはぜひとも試してみたい」

 今回使用したミニチュアは、Jドリームが7月に発売したカプセルトイ「ミニチュア習字セット」(1つ200円)の最新シリーズ。シリーズ初回の発売は2019年12月。今回が第4弾となる人気商品です。

 蒼喬さんに話を聞きました。

 ーー「ミニチュア習字セット」は職業柄、試そうと。

 「職業柄というのもありますが、元は私の知人がSNSで『こんなガチャ見つけて、使えるらしいんだけど、これで蒼喬さんに字書いて欲しい…』と発言したのをたまたま目にしたのが始まりです。こんなすてきなカプセルトイがあるとは知らなかったので、これはぜひとも試してみたいとの感情がわき、作品を書くに至りました」

 ーー手にした感想は。

 「ありがたいことに、20年近く書道を続けてきました。多くの道具に触れてきましたが、その中でもこのミニ習字セットは、見た目もとてもかわいらしく、とてもなじみやすい素敵なデザインです。道具箱の絵は椿の絵や千鳥柄など、和のデザインではおなじみの素材があしらわれ、書道をたしなまない方でも、飾り物としても手にしたい商品だと思いました。情報によれば、フィギュアのキャラクターに持たせて飾ったりする方もいるようです」

 ーープロとして使い心地は。

 「ふたを開ければ、中にはプラスチック製の硯、文鎮、固形の墨、それと書道の筆ではなじみの少ない合成繊維の毛が使われた筆が入ってます。使い心地としては、文鎮はとても軽いので書いてると紙がズレてしまいます(笑)。そして1番重要な筆は、毛が化学繊維ということもあり、動物の毛より硬く、心苦しいですが書き心地は良いとは言い難い部分はありますが、おもちゃとしてのクオリティーは高いのでは思います」

当初は58画の漢字を書くつもりが…

 ーー「美」の文字を選んだ理由は?

 「本来であればもっと難しい漢字を書こうと思ってました。中国の『ビャン』という漢字(編集部注:1文字で画数58画の漢字)であったり…とにかく画数の多い漢字を書こうと思ってました。ですが実際に筆を手に取り、『この筆では画数の多い漢字は書けない!不可能だ』とすぐに悟り、それであれば、画数が少なく、誰でも知っていて、意味の良い漢字は何かなと思い合わせ「美」を選びました。5回ほど練習を重ねた後に書いた『美』の文字が、SNSに上がった作品になります」

 ーー小さな筆は持ちにくかったのでは。

 「小さな筆は毛の長さが1cmほど、持ち手の長さが3cmほどなので、2本指で摘んで書きました。とにかく毛が硬いので、紙に対しての反発力が強いため、はらいなど繊細な技術が必要な部分は思い通りにいかないことがあります。通常であれば筆を立てて文字を書くべきところをわざと斜め、横にしたりして、細さや太さを調節しております」

 ーー墨や半紙は?

 「中に入っている墨はプラスチック製なのですることができません。実際には墨汁を使っております。3滴ほどでいっぱいになってしまうほど小さな硯です。半紙は通常サイズをカットして使ってます。8分の1サイズだったかと思います」

コメント欄にずらり「弘法筆を選ばず」

 ーーTwitterで大きな反響です。

 「率直にうれしいです。書道家の活動は、仕事としてメインに置いているので、自分の技術、書道という和の文化がSNSを通じて多くの方に見ていただけたことに、この上なくうれしく思っております」

 ーー「弘法筆を選ばず」というコメントが目立ちます。

 「多くのコメントもいただきまして、その中でも『弘法筆を選ばず』という言葉をピックアップしてコメントをくださる方がほとんどだったので、日本の教育の過程で学んだ『ことわざ』の知識がこういうところで多く垣間見えるのが面白いなと思いました」

店頭で見るあの文字も実は

 実は、私たちの生活の中でも蒼喬さんの作品にお目にかかることができます。

 アニメ好きの人なら「Fate/Grand Order」 の作中筆文字演出や、NHK Eテレ放送の「銀河英雄伝説 Die Neue These」のタイトルロゴなどを担当。

 最近では、大手外食チェーン松屋フーズが展開するとんかつ専門店「松のや」の8月新商品「黒豚ロースかつ」の店頭ポスターも蒼喬さんの書。確かに「黒豚」の文字や説明文をよく見ると、今回の「美」にも通じる力強さと気品が感じられます。

 一般向けに書道のミニ講座もされる蒼喬さん。興味のある方は公式Twitterアカウント(@sokyo1226)でチェックしてみてください。

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