駐車場で生死の境をさまよっていた黒猫 “甘えたいのに、甘え方が分からない”それでも「全て愛おしい」

渡辺 陽 渡辺 陽

豚まんの包装紙を舐めていた猫

ロビンくん(推定12~14歳・オス)は、2011年12月、東京に雪が降った日の夜に、民家の前の駐車場でコンビニの肉まんの包み紙を舐めていた。たまたまその家の人が猫の保護活動をしている人で、その人の娘さんがロビンくんを見つけて保護したという。推定3~5歳だった。

保護された時は、獣医師に「生死の境目にいるほどだった」と言われるほどやせ細り、危険な状態だった。

「そんな状態だったのに、保護されて部屋に入ると、ゴロゴロと大きくのどを鳴らしながら娘さんにすり寄っていたそうです。きっと保護してほしくて必死だったのだと思います」

その後、知り合いの人のブログなどを通じてネット上で里親を募集。その記事を見た東京都に住むまよさんが連絡を取り、迎え入れることになった。

訳ありっぽい子を探す

まよさんは、トマスくんというアメリカンカールの猫を劣悪な環境のペットショップから引き取り、2011年9月に迎え入れた。その後、先住猫のたぬえちゃんが、14歳で他界した。

「もともと1匹飼いではなく多頭飼いをして、猫同士が寄り添い寂しくないようにと思っていました。トマス1匹になってしまったので、たぬえを失った寂しさを紛らわすように毎晩インターネットの里親募集を見て、迎え入れるべき子を探していました」

まよさんは、子猫から飼いたいとか、どういう見た目や模様じゃないと嫌だとか、そういうこだわりは一切なかった。「里親に巡り合うのが難しそうな訳ありっぽい子」を中心に探して、ロビンにたどり着いたという。

めっちゃゴツ顔の黒猫

2012年2月、夫婦でロビンくんのお見合いに行くと、ロビンくんの保護主は保護活動をしていたので、10匹以上の猫が迎えてくれた。その中には黒猫が数匹いた。ロビンくんは黒猫だったが、黒猫は遠目だとあまり違いが分からない。まよさんが、「どの黒猫かな?」とうきうきしながら見ていたら、ソファの上で「めっちゃゴツ顔」でにらみつけてくる猫がいることに気がついた。

「『まさか、あの猫じゃないよな…』と思っていたのですが、『この子です』と紹介されました。なので、初対面の印象は、『ゴツ顔、愛想なし』でした(笑)」

その場で引き取りを承諾し、保護主が車に同乗し、まよさんの家まで一緒に来てくれた。家の環境の確認が終わり、トライアルがスタート。ロビンくんは、2週間後に正式譲渡された。

「保護された時の様子を聞いていたのですぐに甘えるようになると思っていたのですが、なかなか慣れず、最初の1か月くらいは唸られてばかりでした。初めておどおどと寄ってきて、ソファでくつろいでいた私の足にあごを乗せてきた時は、とても嬉しかったです」

しかし、野良時代に相当恐ろしい目にあったのか、ロビンくんは5、6年経つ頃まで、撫でようとして上から手を出すと、びくっとしておびえたり、唸ったりした。10年近く経った今は唸らなくなったという。

シニアになって、ますます愛おしい

ロビンくんは、まよさんが一緒に暮らした猫たちの中で群を抜いて「甘え下手」で、アピールが苦手な猫だ。かまってほしい時に、どうすればいいのか分からないのか、突然噛みついたり、引っ搔いたり、結構猫上級者向けの猫なんだという。

「でも、私が帰ってくると一番に迎え出てくれたり、トマスがいないといそいそとやってきて膝に乗ったりします。本当は存分に甘えたい、けど甘え方がよく分からない、そんなところがいじらしいんです」

昔の写真と比べると、顔の白髪が本当に多くなって、その変化が愛おしいとまよさんは言う。最近は、ゴマシオというあだ名になっている。

お金はかかるけど幸せ

ロビンくんが、野良時代に相当恐ろしい目にあい、苦労したことは想像に難くない。

「年齢もはっきりわからず、うちに来るまでの間どんな猫生を送ってきたのか分かりませんが、苦労も多かったのだろうと思います。ロビンが幸せを感じてくれていたら、私にとってもこの上ない幸せです」

慢性膵炎と糖尿病の治療をしているため、ロビンくんには1日2回のインスリン注射が欠かせない。

それでも。まよさんは言う。

「動物を飼うということは、多くの責任と金銭的な負担をもたらしますが、それを凌駕する幸せをいつも感じています」

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