新山口駅の消火栓ボックスのデザインがSNS上で大きな注目を集めている。
「透明なボックスに入った消火栓、消火器、火災報知器、AED
これ考えた人天才だと思う(新山口駅)」
と件の消火栓ボックスを紹介したのはブランディングデザイナーの佐野五月さん(@irohazum_s)。
新山口駅南北自由通路に設置されたこの消火栓ボックス。普通、消火栓ボックスと言えば金属製で赤、白、グレーに塗られたものが多いが、こちらはなんと透明で、中におさまっているものが外から全部見えてしまうのだ。これなら中にどんなものがあるか、それらがどんな状態かが一目で確認できる。
今回の投稿に対し、SNSユーザー達からは
「これは見た目と実用性のデザインの融合が素晴らしいですね!」
「中が見える懐かしいデザイン好き」
「私も先日17年ぶりくらいに新山口駅に行ってめっちゃカッコいいと思って写真撮りました 植物もあいまって素敵ですよね 人に見せたらAEDがないって言われて、ちょっと確かに!と思いつつドキドキしましたが」
など数々の称賛の声が寄せられている。
撮影した人に聞いた
佐野さんに話を聞いた。
ーーこの消火栓ボックスをご覧になった状況は?
佐野:山口県へ旅行へ行った際に目に留まり、思わず写真を撮りました。
ーーこのデザインの利点は。
佐野:まず透明ボックスが面白いなと興味を持ったのですが、透明である理由をよくよく考えてみると非常に機能性が高いデザインだと思い写真におさめました。透明であれば中身が一目でわかるため、利用者にとって直感的に理解しやすいです。あくまで私の見解ですが、恐らくメンテナンスの利便性も考慮しているのではないでしょうか。
何より存在感がありました。人の流れに対し対面になるよう設置されていて、友人と会話しながらでもパッと目に留まりました。これも意図してこのような設置の仕方になっているのだと思います。この消火栓ボックスを見て思ったことが、記憶に残ることの重要さです。緊急時に「あの場所にある」とすぐに思い出せることは有事の際に非常に大切なことだと思いました。
私の最寄りの駅など身近な場所の消火器やAEDの位置は思い出せません。いざという時に探す時間がないことを考えると、このような設備はまず記憶に残ることが重要なのだと思いました。時間がなかったので写真を撮ってすぐに立ち去ってしまったのですが、使いやすさも考慮されていればなお良いと思います。
ーー投稿への反響について。
佐野:何気なくポストしたので、大きな反響をいただき驚きました。一番うれしかったことは、デザインの機能性についての感想が多かったことです。一般的に、デザインは見た目の良し悪しで評価されがちですが、機能性を含めた全体性でデザインを考えるべきだと思っているので、皆さんのご感想が大変うれしくそして参考になりました。
「子どもに防災の話がしやすい、教えやすい」という感想も非常に参考になりました。デザインの役割とはその物そのものの機能性や美しさを超えて、コミュニケーションの役割など、さまざまな広がりを持っていることを再認識しました。
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今回の発見を経てデザイナーとして「デザインがどれだけ効果的にその目的を果たし、使用者のニーズや期待に応えるかを意識してデザインをしていきたいと改めて思いました」と佐野さん。
この消火栓ボックスを管理する山口市都市整備課にも話を聞いた。
ーーこの消火栓ボックスの設置場所はどんな立地なのでしょうか?
担当者:新山口駅南北自由通路には、新山口駅及び通路を利用される方々に、季節に応じた山口の自然を感じていただくため、山口県内に自生する約140種の植物を使用し制作した垂直庭園を通路壁面に設けております。
ーー透明のデザインになった経緯は?
担当者:垂直庭園をよりきれいに見せるため壁に埋め込まず、壁面と直角方向に設置しています。また新山口駅の景観と調和したデザインとするとともに、垂直庭園の連続性を遮ることのないよう透明のケースを採用しております。
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今回紹介したような透明の消火栓ボックスは全国でも普及しつつあるようだ。読者のみなさんの身近な消火栓ボックスはどんなデザインをしているだろうか?
佐野五月さん関連情報
福岡市に拠点を置くデザイン事務所「irohazum(いろはずむ)」の代表。ブランディングや企画デザインを通じて、顧客ニーズに応えている。
Xアカウント:https://twitter.com/irohazum_s
irohazum公式ホームページ:https://www.irohazum.com/