「この辞典を開いて読む時、奇数ページのある側」…って何の解説?スマホ時代に国語辞典にハマる辞書系女子が説く「辞典の妙」

青島 ほなみ 青島 ほなみ

分からないことがあれば、なんでもスマホで調べて解決!今や、紙の辞書を使う若者は珍しい時代になってしまいました。

そんな中、SNS上では26冊もの辞書に囲まれて過ごす女性の存在が話題になっています。それは小学校6年生の卒業文集で「いつか新明解を全版そろえて読み比べたい」と書いたほどの生粋の辞書マニアという「んちゅたぐい」さん。

「解説、例文がどう変わっていったのか調べてまとめたいです。絶対おもしろいと思います。」と書かれた卒業文集を紹介したところ、これを見たTwitterユーザーからは

「今時の電子辞書じゃなくて、書籍の辞書なのがスゴい」

「辞書の繊細な表現って深味があって面白いですよね。」

と多くのコメントが寄せられています。

中には、「新しいものが出る度に言葉が変わると映画で知ったけど、小6からその楽しみを見出してるって凄いな」と、辞書編集者が主人公の映画『舟を編む』を思い出したという人も。

辞書の魅力はどんなところにあるのでしょうか?ご本人にお話を伺いました。
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青島ほなみ(以下「青島」):スマートフォンで何でも調べられる時代ですが、辞書のどんなところに惹かれているのですか?

んちゅたぐい:紙の国語辞典の一番の魅力は、目的の語にたどり着くまでにいくつもの語が目に入るという点であると考えます。スマートフォンや電子辞書は調べたいことをすばやくピンポイントに検索でき、非常に便利で私も愛用しています。しかし、紙の国語辞典を引くと「たじろぐ」の隣に「打診」があったり「浮遊」の隣に「富裕」があったりと意味に関係がない前後の語の解説もついでに読むことができます。このような予期せぬ出会いがとても面白く、紙の国語辞典の醍醐味であると思います。一冊でも手元に置き、パラパラとめくってみるだけで「こんな同音異義語があるんだ」「この言葉は知らなかった」というような発見を楽しめます!

青島:引き比べて一番面白いと感じた単語は何ですか?

んちゅたぐい:「左」の解説から、相対的なものを誰にでもわかるように解説するのは難しいということが伝わってきて面白かったです。

新明解国語辞典八版では、「明という漢字の日が書かれている側と一致」「人の背骨の中心線と鼻の先端とを含む平面で空間を二つの部分に分けた時に、大部分の人の場合、心臓の拍動を感じる場所が有る方の部分」と解説されています。

岩波国語辞典八版では、「東を向いた時、北の方」「この辞典を開いて読む時、奇数ページのある側」、明鏡国語辞典三版では、「人体を対称線に沿って二分したとき、心臓のある方」「話し手が北を向いたとき西にあたる方」と書かれています。

岩波国語辞典の「奇数ページ」を用いた解説や新明解国語辞典の「明」という漢字を用いた解説がすぐに左の方向を確認することができるためわかりやすいと感じました。また新明解国語辞典と明鏡国語辞典の「心臓」を用いた解説も実感を伴う解説であり面白いと思いましたが、中心に近い場所にあるということもあり心臓の動きに左右を感じられない人もいるのではないかと思いました。

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一つの単語がこんなに多くの視点で解説されているなんて、辞書の世界はなんとも奥が深いですね。「目的のもの以外にも関心が移る」というのは、辞書に限らずアナログのものならではの魅力なのかもしれません。

この記事を読んでいると皆さんも、仕舞い込んだ国語辞典を引っ張り出したくなってきたのでは?ぜひ国語辞典ならではの新しい発見を楽しんでみてくださいね!


取材協力:んちゅたぐいさん https://twitter.com/iwanttobeJinrui

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