おばあさんにごはんをもらっていた野良猫親子
ニャン吉くん(3歳・オス)は、2018年の初夏、保護猫カフェラブとハッピーのスタッフに保護された。東京都のとある住宅地、自宅の庭で野良猫たちにずっとごはんをあげていたおばあさんがいた。母猫は何匹か子猫を産んだが、おばあさんが老人ホームに入ることになり、ずっとごはんをあげることはできないと家族から猫カフェに相談があった。猫カフェのスタッフが保護した子猫のうち、1匹がニャン吉くんだった。当時、生後1カ月半くらいだった。
その後、ニャン吉くんは一緒に保護された兄弟猫たちとスタッフの家で人慣れ修業をした後、保護猫カフェにデビュー。里親が現れるのを待った。ニャン吉くんはなかなか人慣れせず、猫カフェや譲渡会デビューまで時間がかかった。デビュー後もなかなかご縁がなく、東京都に住むFさんに出会った時は生後11カ月になっていた。
顔は見えなかったが、飼う決心をする
Fさんは子どもの頃ずっと猫を飼っていて、もともと猫が大好きだった。大人になってからは賃貸暮らしで、年に数回旅行で家を空ける生活をしていたので、なかなか猫と暮らす決心がつかなかった。数年前に分譲マンションに引っ越したのをきっかけに、本気で猫を飼うと決めたという。
「飼うなら保護猫と決めていて、3年くらい譲渡会や保護猫カフェに通いました。でも、一人暮らしはだめなところばかり。たまたまネットでみつけた保護猫譲渡会で『一人暮らしOKのヤング猫(1歳前後)』と書いてあったのがニャン吉でした」
2019年4月29日、府中市合同譲渡会にニャン吉くんを見に行くと、ケージには「一人暮らしでも大丈夫です」という紹介文が貼られていた。ケージをのぞくと、隅っこに白い毛の塊があるだけ。ニャン吉くんは、怖くて固まっていた。指でつついても微動だにせず、顔も上げなかった。中村さんは、「せっかく飼えそうな子に出会えたのに、顔も分からない」と苦笑したが、スタッフは「臆病であまり人に慣れていないけど、たぶん大丈夫です」と言った。
「よし!これもご縁かと、ニャン吉を飼うことに決めました。この時点では抱っこはおろか、顔も見ていません」
ある日突然甘えん坊に
2019年5月4日、猫カフェのスタッフがニャン吉くんを車で届けに来てくれた。ニャン吉くんは、早速トイレに篭城。ケージから出しても1週間くらい物陰に隠れ、Fさんが近づくとダッシュで逃げ、毎日夜鳴きした。
「なかなか馴れなくて、本当にこの子と一緒に暮らしていけるのか、最初は心配になりました。ただ、毎日少しずつおもちゃで遊んで、無理に追いかけず慣れるのを待っていると、少しずつ落ち着いてきました。2週間くらいで触れるようになり、正式譲渡してもらいました」
1カ月くらい経ったある日、ニャン吉くんは突然膝の上に乗ってきた。その後は、まさかまさかの甘えん坊全開に。どこに行くにも追いかけてきて、ベッドで寝る時も一緒、目が合うとゴロゴロ喉を鳴らしてくっついてきた。以来、Fさんとニャン吉くんは、ラブラブななんだという。
ただ、相変わらず知らない人のことは怖がって、玄関で宅配便のチャイムが鳴ると全力でタワーの最上部に避難する。Fさんのテレワークは全力で邪魔して、仕事の電話がかかってくると自分も鳴いて返事をする。リモート会議に乱入しかけたこともある。
「コロナで外出が減り、仕事もテレワーク中心となった今、毎日会話したり、笑わせてくれたりするのでいい気分転換になります。ずいぶん助けてもらっています。ニャン吉からたくさんのハッピーをもらっています」