スイーツをモチーフにした作品で知られる現代美術作家の渡辺おさむ(@osamuwatanabe_)さんがTwitterで「春華堂公認!《本当》うなぎパイのストラップ&バレッタをつくろう!」と投稿した写真が注目を集めています。後ろ姿の女性の頭に飾られているのは、思わず笑ってしまうほどリアルな「うなぎパイ」。
リプ欄には「こんなん食べたくなっちゃうやん」「間違えてかじっちゃいそう」「本物と一緒に置いておいて間違えて食べないかやってみたい」とリアルさに反応する人、「頭にうなぎパイ付けてる人いたら5度見くらいした後にガン見しそう」「ええ…(困惑)」と頭にうなぎパイという状況に戸惑う人、「髪にうなぎパイついてるぞ」「これは…『うなぎパイ、髪に付いてるよ』だ!」「芋けんぴ思い出した」と、伝説の少女漫画(※)を連想する人、とさまざまな反応が。
(※)杉しっぽさんの『芋けんぴは恋を呼ぶ』という作品。主人公の髪についた芋けんぴを、彼女に恋する男の子が「芋けんぴ 髪に付いてたよ」とウインクしながら齧る衝撃的なシーンがインターネット上で長く語り継がれている。
「アート界のスイーツ王子」とも呼ばれる渡辺さんは、樹脂などで制作した本物そっくりのスイーツをアートに昇華させた作品の数々が国内外で高い評価を得ています。
今回は、2021年6月12日より「平野美術館」(静岡県浜松市)で開催される展覧会の一環であるワークショップにて、うなぎパイのバレッタやストラップ作り体験を実施。残念ながらワークショップはすでに満席となっていますが、展覧会ではこのリアルなうなぎパイを用いた作品を見ることができます。
普段の作品ではカラフルなクリームやフルーツを多用するポップなイメージが強い渡辺さんがなぜうなぎパイをモチーフに選んだのかなど、お話を聞いてみました。
──このように美味しそうな作品を作るようになったきっかけを教えてください。
美大生時代、自分なりの表現は何かと考えた時に「小さい頃から一番記憶に残っているお菓子を作品として表現するのが最も自分らしいのではないか」と思い、このような作品を作るようになりました。というのも、母がお菓子作りの先生だったのでお菓子は常に身近なものだったんです。
制作を始めた20年前は誰もスイーツをフェイクで制作していなかったので、画材などいろんな素材を試行錯誤して、制作方法を確立していきました。日頃から新しいスイーツをチェックし、本物のスイーツを食べてインスピレーションを得ています。もちろん仕事のためだけではなく、食べるのも好きですよ。特にモンブランには目がありません。
──今回「うなぎパイ」をモチーフにされた理由は?
「平野美術館」での個展なので、この地ならではの作品を制作したいと思い「浜松といえばうなぎパイ!」と一番に思いついたので、モチーフに選んで制作しました。
今回の個展で初公開となる新作、「うなぎパイ燕子花図」は、尾形光琳による「燕子花図屏風」のオマージュ作品で、燕子花の咲く水辺にかかる橋をうなぎパイで表現しています。
今回うなぎパイ作品を制作しSNSで写真をアップしたところ、たくさんの反響をいただいたので、皆さんうなぎパイへの愛が強いんだなと、あらためて実感しました。
──うなぎパイの販売元『春華堂』さんも公認とのことですが、お店の方の反応は?
うなぎパイ作品の写真をお見せしたところ、大変喜んでいただけました! 全国の皆さんのうなぎパイ愛を作品に込めて表現できたと思っております。
──ワークショップではどんな工程でうなぎパイを作るのですか?
ワークショップでは、まず参加者の皆様に半透明の樹脂粘土に専用の着色剤を混ぜてもらい、うなぎパイ色の粘土を作成します。うなぎパイの型にその粘土を入れて取り出し、絵の具で焦げ目などを着色して、ストラップやバレッタに仕上げていきます。
難しそうと思われるかもしれませんが、誰でもリアルなうなぎパイが作れるようにこちらの方で樹脂粘土用着色剤や絵の具の調合を行っており、リアルに見える塗り方なども丁寧に指導するので初心者の方でも楽しんでお作りいただけるかと。
──今回はすでに定員オーバーとのことですが、また次の機会があることを楽しみにしています。ぜひ関西でも開催してください!
2021年6月12日〜8月15日に「平野美術館」で開催される「渡辺おさむ展『お菓子の美術館にようこそ』」では、うなぎパイ作品以外にも、3mのポップコーンを用いた尾形光琳の「紅白梅図屏風」や、クリームで描かれたゴッホ、クレープのフェルメール「真珠の耳飾りの少女」など100点以上の作品が一堂に展示されるそう。無理なく行ける地域の方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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◼️渡辺おさむさんプロフィール
スイーツデコの技術をアートに昇華させた第一人者としてテレビ番組などにも取り上げられる。本物そっくりの精巧なスイーツで表現された作品は国内はもとより海外でも注目を集め、国内外で個展を開催。3冊の作品集や著書が出版されたほか、「大原美術館」(岡山県倉敷市)や「清須市はるひ美術館」(愛知県清須市)など国内5カ所の美術館に作品がコレクションされている。