目にハンディがあっても気にしない!先住のシニア猫をいたわる優しい猫「もっとわがままでもいいんだよ」

渡辺 陽 渡辺 陽

せんべーちゃん(2歳10カ月・オス)は、腹違いの子猫たちと一緒に段ボール箱に入れて捨てられていた。岡山県動物愛護センターで保護されていたところを、猫の保健室むーちょのボランティアが引き出した。なかでも状態が悪く、眼に問題のある1匹がむーちょ先生のところに来た。

ダンボール箱に入れられた11匹の子猫たち

2019年7月、岡山県で主に自治体から猫を引き出して里親探しをしている猫の保健室むーちょでは、岡山県動物愛護センターから11匹の乳飲み子を引き出した。明らかに腹違いの子猫たちが1つの段ボールに入れられ、捨てられていたという。

特に状態のよくない3匹が獣医師でもあるむーちょ先生のところに来た。3匹とも目に問題があった。後に神奈川県に住む神前さんが里親になったせんべーちゃんは、両目が炎症を起こしていてまぶたが腫れあがり、痛々しかった。むーちょ先生が治療し、全員なんとか片目の視界を確保できるまでに回復したという。

真っ先に駆けよってきたが…

神前さんは、猫の保健室むーちょからてんてんちゃんという猫を引き取ったが、後に猫の保健室を運営する獣医師のむーちょ先生のところに目に問題のある子が来たと聞いていた。早く里親が決まりますように!と支援をしつつ、ずっと気にかけていた。

神前さんは、以前もんじろうちゃんという猫を譲渡してもらったので迎えに行くと、真っ先にに神前さんのもとにかけ寄ってきたのが当時のせんべーちゃんだった。

その時、神前さんは、何時間か保護猫と遊ばせてもらったが、せんべーちゃんは濁りつつも輝いたかさぶたの付いた目で見つめてきて、ずっと遊んでくれた。片目が見えず、片目の視界は歪んでいるはずだが、そんなことは一切気にしていないようだった。帰り際に神前さんは、「君は性格がいいから、きっと優しい人にもらわれるよ。今回はもんじろうを連れて行くから、本当にごめんね」とせんべーちゃんに声を掛けた。

「もともともんじろうちゃんという、ずっと気にかけていた子に会えたので、うれしくなった一方で、他の子も飼っていたので引き取れないと申し訳なく思っていました」

あの子しかいない

もんじろうちゃんは、遊び相手だったてんてんちゃんがFIP(猫伝染性腹膜炎)で死んでしまうと落ち込み、最長老のじじちゃんもごはんを食べなくなった。

家族で神奈川中の保護猫カフェをめぐったが、色々なところを回っていても、頭の片隅にはせんべーちゃんがいた。せんべーちゃんともんじろうちゃんは、むーちゃん先生のところで1年以上一緒に暮らしていたので、神前さんは、「あの子しかいない」と決心した。

「目に問題がある子に決めたのは、てんてんへの思いもありました。てんてんも片目がなかったのです」

人にも猫にも優しい猫

せんべーちゃんを迎えに行くと、初回とは打って変わって、神前さんには見向きもせず窓際で寝ていた。

「でも、途中で起きたかと思うと、先生が飼っている高齢の猫たちをなめて回り、本当にやさしい子なのだと思いました」

半年ぶりに再開したもんじろうちゃんとは、初日から近い距離間で、おびえていたせんべーちゃんをもんじろうちゃんが先導して家じゅうを案内し、3日目には猫団子になる仲に。

長老のじじちゃんは、自ら積極的に近寄り、仲良くしたいとアピールした。いまではオス同士、年の差16歳以上だが、毎日一緒に眠っている。シニア猫のききちゃんは終末期だったが、せんべーちゃんが育ての親の雌茶トラ「ろん」ちゃんに似ていたからか、おだやかに受け入れ、せんべーちゃんも優しく最後を見守った。

性格は大の甘えん坊で、とにかく人が大好き。せんベーちゃんが来てから常に在宅勤務で一緒にいるにもかかわらず、毎日、まるで久々に再開したかのように駆け寄り、足に抱きついてくる。

「人も猫もこの子に救われています。性格も行動も悪いところがなさ過ぎて、もっとわがままに、好き勝手していいよ!と声をかけています」

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