和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と称された酒類販売会社元社長、野崎幸助さん=当時(77)=に2018年5月、多量の覚醒剤を摂取させて殺害したとして、元妻の須藤早貴容疑者(25)が和歌山県警に殺人と覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕され、一夜明けた29日に送検された。
元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は30日、当サイトの取材に対し、須藤容疑者と接触していた覚醒剤の密売人がすでに摘発されており、同容疑者に関する供述が「強い証拠」になりうる可能性を指摘した。
この事件では「殺害手段」となった覚醒剤の入手が焦点となっている。捜査関係者によると、須藤容疑者は事件前、SNSで密売人と連絡を取り合っていたとみられ、両者のスマホの解析から、互いの位置情報の一部が一致。2人はともに田辺市内の同じ場所にいたとみられている。
小川氏は「捜査関係者の話によると、密売人はすでに摘発されているのではないか。密売人のスマートフォンは当然押収されているし、須藤容疑者に関しての供述も得ている可能性もあり、それは強い証拠となりうる」と明かした。
さらに、同氏は「警察側が、容疑者の否認や完全黙秘など最悪の状況を考えた上で、それでも大丈夫という確証があったのではないか。これだけ世間の注目を浴びている事件ですから、逮捕したはいいが、(勾留期間の)20日間で起訴できませんでした、釈放しました…では済まされない。なおかつ、今回は本丸である殺人事件で逮捕していますので、再逮捕は考えにくいわけです。警察も会見で『自信がある』と断言しているわけですから、それなりの物証や証拠があるということだと思います」と付け加えた。
同容疑者と密売人の位置情報が一部で一致したという報道について、小川氏は「位置情報は本人が携帯端末の情報を消したとしても、サービス提供元には記録が残っているため、警察は行動データを追うことが可能です」と補足した。
また、野崎さん宅の台所や掃除機から覚醒剤が検出されたことも分かり、容疑者が台所で飛び散った覚醒剤を掃除機で吸い取った可能性も浮上している。
小川氏は「私は何度も野崎さん宅で現場取材しましたが、当初は不審死ということで、規制線もなく、普通に従業員の方が出入りしていたリ、メディアの者が室内に案内されたりということもあった。そういう意味で証拠の保全は少しずさんだったかなという印象はある」と懸念した。
一方、野崎幸助さんが須藤容疑者に離婚を切り出したことが事件の動機になった可能性について、小川氏は「以前、須藤容疑者は、どこかの取材で『(結婚)相手が資産家であり、年齢差があるので色々言われているのは知っていますが、お相手の資産力や財産も魅力の1つです』と答えていました。それが本音だと思います。それなのに離婚させられてしまうと、毎月のお手当の100万円がもらえず、妻として本来なら将来相続される金額ももらえなくなってしまう…といったようなことを、本人は当然考えたと思います」と推測した。
果たして、勾留期間の20日間で起訴はあるのか。
小川氏は「捜査員にとって『地獄の20日間』になる。勝負のしどころです。まだ、逮捕に至らない時期では、口を閉ざしていた者も、今回の逮捕によって話をする者も出てくると思います。『逮捕されたのなら話してもいい』と思う者も実際にいるようです。この20日間、取調べ官はもちろんですが、捜査本部に従事している捜査員はやることが山のようにあるはずです。『証拠の王様』と言われている自白が取れれば一番いいですし、それによって『秘密の暴露』、裏付けが取れることによって、より起訴に近づくと私は思います」と見解を述べた。