ルパン三世でおなじみ?モーガンが作った「スリーホイーラー」を知っていますか 別次元の楽しい乗り物です

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 クルマの世界でスリーホイーラーというと、三輪自動車のことです。現在ではあまり見かけませんが、ダイハツミゼットとかマツダのトラックとか、昔は結構ありましたね。今回、イギリスのモーガン社が2011年に発売した「モーガン・スリーホイーラー」というクルマに試乗させて頂く機会がありましたので、ご紹介したいと思います。

モーガンってなに?

 モーガンというとよく「ああ、ルパン三世が乗ってたクルマでしょ?」といわれることがあります。TV版ルパン三世の第二期でルパンが乗っていたあのクルマ。CM前と後に「でけでけでけでけルパン・ザ・サード!びよ〜ん」なんてルパンが転げ落ちたりハンドルが取れたりしていた、あれのことですね。でも実はあれ、モーガンでは無くて設定ではアルファロメオのグランスポルト・クアトロルオーテというクルマらしいです。しかしまあとにかく絵に描いてしまうと見分けがつかない程度に似ている、ということですけどね。

 その間違えられたモーガンはプラス8という車種で、まるでクラシックカーのような車体にローバー製の4000ccV8エンジンを積んだロードスターです。1968年から2004年まで造られました。クラシックカーのように見えて実は結構最近のクルマなんですね。

モーガン・スリーホイーラーとは?

 さて、そんなモーガンから2011年にデビューしたのが三輪車「モーガン・スリーホイーラー」です。モーガンが1910年に最初に出したスリーホイーラーへのオマージュ、という見方もされますが、このスリーホイーラーは全てに渡って新しく、現代の技術で造られました。ボディは鋼管フレームにアルミの外板を組み合わせたもので、前が二輪後ろが一輪です。エンジンはS&S社製の2000ccV型二気筒。S&S社はハーレー・ダビッドソンなどのチューンナップ用エンジンを開発・製造している会社ですから、このモーガン・スリーホイーラーを前から見ると、見た目ほとんどハーレーのエンジンをボンネットのさらに前に縦置きしたような形をしています。

 車体はとてもコンパクトに見えますが、横幅は実は1.7メートル超えです。そう、乗用車としてサイズ的に3ナンバーなんですね。しかし重さは580kg程でクルマとしては超軽量です。そしてエンジンのパワーは69馬力あります。

いよいよ試乗してみます

 さて、いよいよ乗り込みます。このクルマにはドアがありません。車体の横に通っているマフラーを跨いで、普通のクルマだとドアがある辺りを乗り越えて、シートに収まります。車内(といっても内も外もあまり変わらない感じですが)はとてもタイトで、以前ちょっと座らせてもらった零戦のコックピットみたいです。きっと昔の複葉機とかこんな感じだったのかな、って雰囲気です。

 エンジンを始動すると、フロント部分からものすごい鼓動を感じます。そう、振動とかそういう不快な感じでは無くて、あくまで鼓動、ビートです。このタイトなコックピットとダッシュボード回りの佇まい、そしてエンジン搭載位置。これは本当に飛行機みたいです。

 一気筒当たり1000ccもあるビッグツインエンジンはまさにハーレーみたいな音を立ててアイドリングしています。軽くアクセルをあおってみると「ずどっ、ずどどっどどっ」と、これまたハーレーみたいな音を立てて意外と軽く吹けます。しかしこの回り方、音。筆者はバイクにも乗るのであまり違和感はありませんが、クルマしか乗らない人だとちょっとびっくりするかもしれません。

 予想に反してごく普通のタッチのクラッチを踏み込んで、ギヤを一速に入れます。このミッションはマツダ製だそうで、気持ちよくすっと入ります。アクセルを軽く踏んでクラッチを繋ぐと、ごく自然に走り出します。

 位置的に運転席からは左側の前輪がまったく見えません。車幅は結構あるので、ちょっと気をつけないといけません。アシストの無いハンドルは軽くは無いですが、フロントタイヤがバイク用で細いのでさほど重くも無いです。路面からのショックはダイレクトにハンドルに来ますが、これもまた楽しいと感じる範囲ですね。

 ちょっと広い道に出たのでアクセルを踏むと、ずだっ、ずだどだどだどっと軽快に加速します。そしてこれまたアシストが無くてやや重めのブレーキも、しっかり踏めばきちんと効いてくれます。ただ、限界に近くなるとどんな挙動を示すのかわかりません。調子に乗ってペースを上げすぎるときっと、ごく普通の乗用車用タイヤ一輪だけの後輪がどっかへ吹っ飛んでいきそうです。

 とにかく低くタイトな運転席、これ以上無いくらいにオープンエアなフロントガラス、そしてごく自然な操作感。これはめちゃくちゃに楽しいです。いわゆる乗用車に求められる実用性とか快適さなんてまったく無視したところにある、純粋に「走って楽しい乗り物」です。

 新車価格で約800万円、さらに所有するにはガレージが必須な、とても敷居の高いクルマです。しかしこれは乗ると魅入られます。実に危ないですね。

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