「トラウト(鱒)!」の声に店内でシューベルト大合唱 音楽の都ウィーンでのバイオリニストの思い出に「ジブリみたい」と感動

はやかわ かな はやかわ かな

「ウィーンに来たばかりの時。恥ずかしながらほとんどドイツ語ができず、英語でどうにか生き延びていた時期があったんだ。ある日私がレストランで「魚が食べたい」と言ったところ「フォレレがお勧め」と返されたんだけど、フォレレがなんだかわからなくてそれって何?って聞いたんだ。」と、ウィーンに留学した直後の思い出話を投稿した、ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん(@bayorinhiki)。続いて、その後の顛末も披露されました。

 この時、「フォレレ」を説明する英語が思い浮かばなかったウェイターさんは、しばらく考えた後、ある歌を口ずさみ始めたそうです。

「お店の人はフォレレを英語で何ていうか少し考えてたんだけど、思いつかなかったようで突然あるメロディーを口ずさみ始めたんだ。それはシューベルトの鱒。「トラウト!」と私が叫んだ時には隣の席のお客さんもその隣のお客さんも皆「鱒」を歌いだして大合唱。こういう所ウィーンだなって思ったんだよね」(ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さんのツイート)

クラシック音楽の都ならではの思い出話を披露した、ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん(@bayorinhiki)。オーストリアのオーケストラでバイオリン奏者として活動されている、ウィーン在住の音楽家さんです。

まるで映画のワンシーンのようなそのエピソードに、リプライにはたくさんの感動の声が寄せられました。

「鱒→トラウト→フォレレ」

「おお! リアルフラッシュモブだ。」

「単語わからなくて歌で伝えるの素敵すぎる」

「さすが!ウィーンですね」

「<音楽の都>ならでは!」

「なんだか涙が。素敵だなあ。。」

「ジブリの映画になりそうです」

「なにこの素敵な地球」

「音楽ってすごい!!」

ウィーンを訪れたことがある方や、音楽好きの方からは、「ウィーンのこういう所がホント大好き♡」「私も鼻歌で参加したかった」といったリプライも。英語が思いつかず、シューベルトの「鱒」をとっさに歌ったウィーンのウェイターさんも、「トラウト!」の声を合図に合唱してしまうお客さんたちも、素敵過ぎる!

「音楽教育はむしろ日本のほうが熱心なのかな?と思うことがありますが、音楽が身近にあるという面では、やはりウィーンは特別でしょうね。

ウィーン国立歌劇場や、ウィーン楽友協会の演奏会のチケットも、立ち見席であれば数百円で手に入りますし、国立歌劇場、フォルクスオペラなどでは、子どものチケットは格安です。そのため、芸術に興味のある子どもたちは、早い時期から気軽に質の良い音楽を聴くことができます。

そういう子どもたちが大きくなってお客さんとなり、演奏会に足を運んで来てくれるんです」(ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん)

ちなみに、残念ながら当時はドイツ語初心者だったため、合唱してくれたお客さんやウェイターさんとはお話ができなかったそうですが、その後テーブルには無事、「フォレレ」が運ばれてきたそうです。

「正確な料理名は覚えていないのですが、Forelle gebraten(フォレレ ゲブラーテン)というお料理だったと思います。鱒を丸ごと焼いたお料理で、ハーブのバターを添えて食べることが多いです。付け合わせはゆでたジャガイモやグリーンサラダなどです」(ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん)

現在、オーストリアは依然として厳しいロックダウンの最中。音楽家は観客の前で演奏を行うことが許されておらず、観客を入れない録音、収録などの業務のみが許可されているそうです。音楽家の方々はそれぞれ、オンラインでのレッスンや、自宅でのコンサートを有料配信するなど、各々が手段を模索されているといいます。

「私の場合、子どもが産まれたタイミングで、オーケストラ以外の演奏の仕事……遠征を伴う室内楽の演奏会などをセーブしなくてはならなくなったため、留学したくてもできなかったり、近くに先生がいない方々に向けて、オンラインレッスンを始めていました。私自身、留学したいと思った時に近くにドイツ語を勉強できる場所がなくて、とても苦労した経験があったので。

コロナ禍以降、オンラインレッスンの生徒さんの数が格段に増えました。バイオリンを習いたい人ってこんなに多いんだ!と、びっくりしたくらいです」(ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん)

今はネットを通して世界中の生徒さんに指導をされている ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん。しかし、コロナ禍で2年も日本に里帰りができず、かなり寂しい思いをされているそうです。

「日本にもきっと、自由に旅ができる日を待ち望む方々がたくさんいらっしゃると思います。今回の私のツイートにたくさんのいいねをいただいたのは、ウィーンという街が持つ独特の雰囲気に対する懐かしさや、憧れが理由なのかなと思っています」(ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん)

「行き来はできなくても、世界は相変わらずそこにあり、時を刻んでいます」と、ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さんは続けます。

「ウィーンは”変わらない”ことで有名な街です。今、ウィーンの街では音楽が途絶え、レストランもお店も閉まっています。でも事態が収束すれば、またいつもの姿のままで、世界中からやってくる方々を待っています。日本の皆さんもまた、ウィーンに遊びにいらしてください」(ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さん)

コロナ禍の今、音楽は不要不急のものとされ、世界中の音楽関係者は、ジャンルを問わず苦境に立たされています。またコロナ禍によって、人種や国籍に対する偏見も、以前にも増して悪化している状況です。

けれど、この「鱒」のエピソードのように、音楽には言葉や人種、国境や宗教などを超えて、人々に感動や希望を与えてくれる力がきっとあるはず。

音楽がいつかまた、分断された世界を繋いでくれると信じていたいものです。

■ばよりん弾き@ドイツ語勉強中さんのブログ「ばよりん弾きのブログ」

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