ホームレスのおっちゃんたちに「写ルンです」を渡したら 大阪のNPO、写真集出版に向けて支援募る

竹内 章 竹内 章

ホームレスのおっちゃんたちが、レンズ付きフィルム「写ルンです」で撮影したスナップ写真で写真集ができたらなあ、いや、作るんや!というプロジェクトをご存じですか。ホームレス支援に取り組む大阪市北区の認定NPO法人「Homedoor(ホームドア)」が5月7日まで費用をクラウドファンディング(CF)で募っています。事務局長の松本浩美さんに聞きました。 

ホームドアは2010年4月に設立。ホームレスの人をはじめとする生活困窮者への就労支援、生活支援ホームレス化の予防、ホームレス問題に関する啓蒙活動に取り組んでいます。プロジェクトの背景にあるのは、2017年から始まった、レンズ付きフィルムをホームレス状態の人に渡し、日常を撮影してもらうという取り組みです。これまで20人あまりが200枚以上を撮影。切り取られた町の風景はどこか味があり、撮影者の物語が投影された一枚も。写真はインターネット上で販売され、撮影者には売上金が還元されます。

今回、新たに写真集を作る狙いはいくつかあります。「撮影する行為がそれぞれの人たちの目的となり活力をうむ」という以前からの利点に加え、「ホームレス問題に関心のなかった人たちにも情報が届く」「書籍として流通することで、世の中に残り発信を続けられる」があります。こうした理念に、重版を連発する話題の出版社「ライツ社」(兵庫県明石市)の担当者が共感し、プロジェクトが動き始めました。初版約1000部を想定し、CFの目標額は450万円。新たに撮影するためレンズ付きフィルムの購入費や印刷・製本などに充てられます。

大阪生まれの松本さんは12歳でホームレス問題を知り、国内の貧困について関心を持つように。関西学院大で社会起業を学ぶ傍ら、ホームドアに活動に参加するようになりました。

―「世の中にある誤解や偏見を写真という表現で超えたい」とチラシにうたっています。

「他の社会課題に比べて支援金が集まりにくいという傾向があります。それは『ホームレスになるのは自分の責任だ』と思われてしまうからです。ですが、ホームレス状態に陥るきっかけは、突然の病や失業による困窮、家庭や職場の人間関係の悪化など、誰にでも起こりうる出来事がほとんどです」

―ホームレス状態の人への視線を変えよう、と。

「『昼間、公園のベンチで寝ている怠惰な人』というイメージを持たれがちですが、実際には早朝や夜間に缶集めをしているので、昼間は大切な休息時間です。アルミ缶の相場は1キロ集めて130円です。少し前は100円を切っていました。人にもよりますが、1日かけて3000円ぐらいの収入と聞きます。そうした背景を知ってもらうことが誤解や偏見をなくすことにつながります」

―写真にはその人の物語が投影されているのですか。

「プロのカメラマンから『この構図、自分じゃ思いつかないな』『着眼点が面白い』といった言葉をいただきます。そういった声を撮影をした人たちに伝えると思いがけないエピソードを教えてくれます。川沿いに住んでいる人は『水の神様に毎朝お参りしてるねん。だからこの神社を撮ったんや』、花をよく撮影している人は『おじいちゃんが花を育てるのが好きな人やったからその影響かな』とか。写真集では、写真にその人のエピソードも添えようと思っています」

―撮影が目的になり、活力を生むという考え方が興味深いです。

「金銭的な支援も必要ですが、日常の目的や役割をつくるという支援の重要性を強く感じています。カメラを渡した人全員がやりがいを感じて…というわけではありませんが、野宿生活から次のステップに移った人もいます」

ホームレスの当事者の視点による写真集は、実現した際、手に取った人の気持ちをどう揺さぶるのでしょうか。CFは期間は5月7日午後11時59分まで。5000円の支援で完成した写真集1冊、1万円の支援で写真集1冊とポスターのリターンがあります。

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写真集の支援はこちら→ https://camp-fire.jp/projects/view/247684

これまでの写真はこちら→ https://www.homedoor.org/snapshot/

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