会食時のうちわの効果、そもそも科学的根拠は? 兵庫県知事が挙げた「フェイスシールド」を調べてみた

竹内 章 竹内 章

兵庫県が新型コロナウイルス対策として打ち出し、その後撤回した「扇子・うちわ会食の推進」。4月9日に井戸敏三知事が提唱し、32万本のうちわの配布が発表されましたが、13日に神戸市が配らないよう県に申し入れ、14日に配布を中止という異例の展開をたどりました。そもそも、飛沫防止としてのうちわはどこまで科学的裏付けがあるのでしょうか。 

700万円をかけ、神戸、尼崎、西宮、芦屋市の飲食店約1万6千店に20本ずつ、計32万本のうちわを配る計画が当初報じられると、SNSでは批判の声が相次ぎました。神戸大大学院医学研究科の岩田健太郎教授(感染治療学)は自身のアカウントで「うちわとか、論外。一人、家族で「外食」はいいけど、「会食」はだめ」「こんなふざけたことやってる状況じゃない」とツイートしました。 

9日の知事会見はユーチューブにアップされており、その中で、今回のうちわ会食をめぐる発言や記者との質疑の様子を確認できます。また、県のHPでは記者とのやり取りを読むことができます。例えば、「使わないよりはよい、とは分かるが、科学的根拠は」との記者からの質問に、知事は「フェイスシールドがOKならば、飛沫感染防止でうちわやセンスもOKのはず」と答えています。また、対策本部会議・協議会の委員の反応を尋ねた記者には、「うちわなどで会食をさせる段階ではない」「会食自体を何とかしろ」といった強い意見が出たと説明しています。 

知事の発言の中で挙げられたフェイスシールドはどこまで効果が期待できるのでしょうか。新型コロナ対策を厚生労働省に助言する専門家組織は2020年10月、政治家やタレントが使うことが増えているフェイスシールドやマウスシールドについて「しぶきを防ぐ効果が弱い」と強調し、マスク着用の徹底を求めています。

まいどなニュースの2021年1月16日配信記事では、マスク、フェイスシールド、マウスシールドの効果の比較図を掲載しています。豊橋技術科学大学や理化学研究所の実験結果をもとに全音楽譜出版社が作ったもので、吐き出す飛沫量と吸い込む飛沫量において、不織布マスクではマスク非着用時に比べそれぞれ20%、30%にまで量を抑えられますが、フェイスシールド、マウスシールドは吐き出し飛沫は80%、90%にとどまり、吸い込み飛沫については「小さな飛沫には効果なし、エアロゾルは防げない」という結果で、不織布マスクに比べ効果は著しく落ちます。となると、口元を覆うだけのうちわについても、「マスク着用時に比べ隙間が比較にならないほど大きく、効果は劣るとしかいえない」(ある医師)といいます。

医療関係者は一連の流れをどう見たのでしょうか。兵庫県内の病院に勤務する医師は、まいどなニュースの取材に、「うちわで防ぐことができるのは大きな飛沫ぐらいで、エアロゾルには無力だろう。一店あたりわずか20枚という点においてもほとんど無意味」と語ります。配布が見送られたことについては「妥当」としつつ「会食をやるとしても『できる限りの少人数で黙食』が鉄則。自治体は専門家の意見をしっかり聞きながら決めてほしい」と話しました。

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