公園を放浪していたボロボロの犬、「ペットショップで犬を買う違和感を覚えた」里親のトライアルで幸せつかむ

渡辺 陽 渡辺 陽

こっぺぱんくん(推定12歳・オス)は、千葉県内の公園で保護された。何日も放浪していたようだった。保護団体が愛護センターから引き出し、トライアルに2度行ったが戻された。3度目のトライアルで里親が決まったこっぺぱんくん。次第に自分らしさを前に出せるようになり、生き生きしてきた。

公園を放浪していたボロボロの犬

2013年夏、こっぺぱんくん(愛称こっぺくん)は千葉県内の公園を放浪してたところを捕獲され、愛護センターに来た。放浪していたのかやせ細り、毛は伸び放題。まるでぼろ雑巾のようで、全身に赤みもあり、体をかきむしっていたそうだ。迷子札もなく、飼い主の迎えもなく殺処分の日が迫っていた。

2013年8月19日、保護団体シンデレラプロジェクト(現在、別団体が吸収)と連携しているボランティアのトリマーがセンターを訪れ、こっぺくんを綺麗にカットし、引き出した。推定5歳だった。

ペットショップでは犬を買わない

神奈川県に住むせきのさんは、前飼っていた犬のぺぺちゃんを亡くして、やっと気持ちが落ち着いてきたところだった。

「父のお散歩相手も欲しかったので、もう一度犬を飼うことにしたんです。迎えるなら保護犬と決めていました。フードを購入するために立ち寄ったペットショップで、ジャックラッセルテリアを検討している人に店員が、『この犬種は散歩いらないですよ!』、『〇〇円でこんなかわいい子といられますよ!』、『大きくなるのはまだまだ先です!』と説明している場面を見かけました。ジャックラッセルテリアの散歩をしなくていいなんて、ありえません。この時、ペットショップで犬を買うことに違和感を覚えたんです」

保護犬を迎えたいと知人の獣医師に相談したところ、「昨日、去勢手術した犬がトライアルに失敗して、里親が見つからないらしいから連絡してみたら」と言われ、せきのさんはその日のうちに保護団体に連絡、最短日での面会予約をした。

保護犬を飼うと決めていたが不安も

せきのさんは、「保護犬」を飼うと決めていたが、不安もあった。人を怖がっていないか。心を開くまでどのくらいかかるだろう。病気はあるのかなど。ただ、「どんな子でも迎えよう」と決めていた。

10月26日、せきのさんはこっぺくんを迎えに行った。初めて会ったのに特に反応しないこっぺくんを見て、「犬らしくないな」と思ったそうだ。 団体には他の保護犬もいたが、こっぺくんはトライアルに2回失敗していた。外でしかトイレをすることができないので留守番させることができず、ずっと飼い続けるのは難しいと返された。保護団体でもトイレシートのトレーニングを試みたが、どうしてもこの点が克服できなかったという。

一緒に帰ろうとした時、それまであまり反応のなかったこっぺくんがぱっと立ち上がり、ドアに向かって一直線、勢いよく外に出た。車に飛び乗り、運転席まで勢いよく行き、外をきょろきょろしていた。

「その姿を見たら保護犬に対する不安が全くなくなり、可愛らしさに笑みがこぼれました」

日向ぼっこをしている姿を見るだけで幸せな気持ちに

初日はとても緊張し遠慮していたようで、新しい場所に来たという興奮はあまりなく、ソファに座り、「ぼくここにいていいですか?」という感じで、おとなしくしていた。ごはんもゆっくり「かーりかーーーりーー」という感じで食べた。

1週間経ってもこっぺくんは一度も鳴かなかった。せきのさんは、声帯を切られてしまっているのではないかと心配した。チャイムが鳴っても、人が来ても、部屋で1匹にしてみても一切鳴くことがなかった。1週間ほど経って、初めて「わんっ」と遠慮しがちに鳴いた時、家族全員で「わーーー!!声だしたーー!!鳴いた鳴いた!」と喜んだという。

 保護団体にいる時は、本当は甘えたいのに他の犬がいると遠慮してしまい、甘えることができない子だった。本当はなでてほしいのに、それをアピールできない遠慮しがちな性格。せきのさんは、こっぺくんがとことん甘えられるようにしたいと思った。今では、とにかく膝の上に乗るが大好き。横にいるときも、寝るときも体のどこかをくっつけてくるという。

「保護犬というと、なつかない、飼いづらそうというイメージがあるかもしれません。でも、すべての子がそうではありません。犬を飼おうと思った時は、保護犬という選択肢もあることも考えてもらいたい」と、せきのさんは言う。

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