2月6日、7日に実施された第115回医師国家試験。
世情を反映してか、近年の医師国家試験では精神科の問題の比重がやや大きくなりつつあるようだが、今SNS上では今年の医師国家試験に出題されたある精神科の問題が大きな注目を集めている。この問題を紹介したのは医学生のめろん(@gatigatitv)さん。
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【実際の問題文】
25歳の女性。異性関係や職場の人間関係のトラブルがあるたびにリストカットを繰り返すため、母親に伴われて受診した。
本人はイライラ感と不眠の治療のために来院したという。
最近まで勤めていた職場は、複数の男性同僚と性的関係をもっていたことが明らかとなり、居づらくなって退職した。
親しい友人や元上司に深夜に何度も電話をかけるなどの行動があり、それを注意されると、怒鳴り散らす、相手を罵倒するなどの過激な反応がみられた。
相手があきれて疎遠になると、SNSで自殺をほのめかし、自ら救急車を呼ぶなどした。
一方、機嫌がよいと好意を持っている相手にプレゼントしたり、親密なメールを何度も出したりするなど感情の起伏が激しい。
この患者にみられることが予想される特徴はどれか。
a 繰り返し嘘をつく。
b 第六感やジンクスにこだわる。
c 慢性的な空虚感を抱えている。
d 完全癖のため物事を終了できない。
e 自分が注目の的になっていることを求める。
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リストカットを繰り返し、母親に伴われて来院した女性患者。その近況や行動傾向から、この患者にみられることが予想される特徴を五つの選択肢から選ばなければいけないのだが、これが素人にはどれも当てはまる気がして容易に判断がつかない。
そのあまりの難解さに、精神科の専門医とおぼしきSNSユーザー達からも「"慢性的な空虚感"という言葉は境界性人格障害の診断基準の1つなのです。また、その他の選択肢は虚偽性人格障害や演技性人格障害などのその他の人格障害を示唆しているものと思います。まぁ、専門医試験レベルです」「情緒不安定性パーソナリティ障害の典型例として書いているので答えはc一択なのですが現場ではeの人もいます。あとパーソナリティ障害と思って双極性障害(躁うつ病)の人がいるので、この問題のような先入観で見ると誤診するのが精神科の難しさでもあり面白さです。」などという声が上がっているほどだ。
めろんさんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):今回、この問題をご覧になった経緯、ご感想をお聞かせください
めろん:医師国家試験受験時に見ました。感想としては問題文から境界性パーソナリティ障害ということはわかったのですが、選択肢の中身が非常に細かく、「ここまで細かく聞くのか!」と思いました。医師国家試験は年々レベルが上っているので、より深い勉強を要求されるようになってきた印象です。
中将:正解はどうやらcのようですが、めろんさんは正解がわかったでしょうか?
めろん:選択肢のcとeで迷ったんですが、SNSに自分のことを投稿したという問題文の記述から、注目を引きたいのかと思いeを選びました。
中将:この問題についてご投稿されようと思ったきっかけ、今回の反響へのご感想をお聞かせください
めろん:精神科やその患者さんへの偏見などを助長するつもりはなく、あくまで医師国家試験の問題の感想をつぶやいたつもりです。実際に正答率も低く、精神科のより深い知識が要求されるようになってきたという感想です。ツイートが伸びた理由としては、症例患者がSNSを利用していたりと一般の方も理解しやすい出題だからかと思います。
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▽「めろん」さん関連情報
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これだけ専門性の高い問題が出題されるとなると医学生の方たちの負担も大変だろうが、こういった施策によりメンタルヘルスに関するより正確な知識、治療法が普及することを願いたい。
なお、めろんさんはご自身のnoteアカウントで「TOEIC950取った勉強法」「正しい脱毛の知識」「ハイポ病院のマッチング方法」など興味深い記事を多数公開中。ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。