新型コロナウイルスは飲食業界に大きな打撃を与え続けている。
長引く自粛ムードに不景気…いくらGo To Eatキャンペーンが人気と言っても大部分の業者にとって得られる利益はコロナ以前にはるかに及んでいない。個人店もちろん大手チェーンでも閉店する店舗は後を絶たず、残ったお店もなかなか今後に明るい展望を持ちがたい状況だ。
しかしそんな中にもかかわらず、新たにオープンするお店もある。今回ご紹介するお店の名は「HONEY BUNNY（ハニーバニー）」。高級住宅地として知られる兵庫県芦屋市で10月16日にオープンした、カフェを兼ねた製菓店だ。
「HONEY BUNNY」はなぜこのタイミングでお店をオープンさせたのだろうか？店主の西田さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ（以下「中将」）:これまでご夫婦でお菓子屋さんにお勤めだったということですが、独立されたきっかけはなんだったのでしょうか。
西田:昔、飲食を始めた頃はものづくりやお客さんと対面して仕事することが楽しかったんですけど、会社が大きくなって自分の立場も上がっていくとそればかりでは済ませられない要素も増えてしまったんですね。原価を抑えながらいかにお客さんにアプローチするかとか…それはそれで必然性や別の楽しさもあるんですが、2年前くらい前に勤めていたお店が移転することになったのをきっかけに、もう一度原点に立ち返りたくなったんです。
個人店なら自分たちが食べていけるだけの利益がでればどうにかやっていけます。純粋に良いと思えるものを作って、自分たちもお客さんも満足してもらえる正直な商売がしたいと思ったのが独立のきっかけです。いつまでやっていけるかわからないですけど（笑）。
中将:お洒落な内装ですがほとんどご自分たちで工事されたそうですね。
西田:6月末で仕事を辞めたんで7月からは無職だったんですよ。経験はなかったんですが、他にやることもないし自分たちでやってしまおうかと。内装や電気系をやってる友達の協力を得ながらなるべく安くすませて（笑）。
映画の「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「パルプ・フィクション」が好きなんですけど、そんなアメリカンな世界観を自分たちなりに再現した感じです。
中将:芦屋に出店されたのは理由があるのでしょうか？
西田:僕は阪神打出（芦屋市）出身で芦屋のお菓子屋さんに長く勤めたんですが、この土地には僕たちの思うようなことを受け入れてくれる文化の土壌があると思ったんです。足元を見ず、多少高くても見合ってると思えばお金を出してくれる人が多い土地なんですね。
中将:開店準備中はコロナ真っ盛りだったと思いますが、あえてこの時期に開店することに迷いはありませんでしたか？
西田:すごく迷いました。「こんな時にやるのか…」と不安になりましたし母親や周りの人も「大丈夫か？」と心配してくれましたが、どうせ今後10年、20年お店をやったらコロナじゃなくてもなにか別の問題は起こるはずですから。
中将:開店してみて反応はいかがですか？
西田:コロナの影響もあって開店の告知を全然してなかったんですよ。まだまだ知り合いで持ってるような感じですが、それでも気になって見に来てくれる地元の方がちらほらいて有難いですね。そういう方たちのニーズを見極めて店の営業方針も微調整していきたいと思っています。
中将:お店や商品のコンセプトについてお聞かせください。
西田:お菓子屋さんで独立する人ってそれまで勤めていたお店のメニューを売りにすることが多いんですが、「HONEY BUNNY」ではまったく違った新しいものを打ち出しています。今はアメリカンパイや焼き菓子が売りですがアメリカ菓子屋ではないし、自分たちがその時美味しいと思ったものを出したいと思っています。
中将:現状、水曜と木曜がお休みということですが、飲食店、お菓子屋さんで週休2日のところは珍しいですよね。
西田:飲食店はどこも労働時間が長くて休みも少ないですよね。特にお菓子の業界は始発、終電で家と職場を行き来してあとは寝るだけ…。でもそういう仕事を続けると身体にも精神にも良くないし、結果的に効率も悪くなるんじゃないでしょうか。
うちは週休2日と言っても1日は仕込みをしないといけないのですが、営業はしないので残った時間は食事に行ったり遊びに行ったりできますよね。そういう自由な時間を持つことで新しい発想や気分よく仕事をできる活力を保ちたいなと思ってるんです。
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▽HONEY BUNNY（ハニーバニー）
所在地:兵庫県芦屋市松ノ内町10-17‐101
アクセス:阪急芦屋川駅から徒歩1分、JR芦屋駅から徒歩8分
営業時間:10時～18時
定休日:水曜、木曜
公式サイト:https://www.honey-bunny-ashiya.jp/
公式Instagramアカウント:https://www.instagram.com/honey_bunny.ashiya?igshid=1dy0wt9xtlqxc
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せかせかと目に見える利益ばかりを追求してきた現代社会にほころびが見えつつあるこの頃、西田さんの生きざまはたいへん潔く爽やかで、かつ飲食業に生きる人々の本来あるべき姿を体現されているように感じられた。適度に休みながら本当に良いものを欲しい人に提供する…これはアフターコロナの生き方の大きなヒントになるのではないだろうか。
