「農林水産省の検疫探知犬キャラクター、クンくんの動画があまりにかわいくて。音楽も妙な中毒性があってとても良いです。調べてもらえませんか」
当サイト「まいどなニュース」に読者からメールでそんな調査依頼が舞い込みました。
麻薬探知犬や爆発物探知犬は知っているけど検疫探知犬？ と首をかしげる人も多いのでは。検疫探知犬とは、国際空港の手荷物や国際郵便・宅配便の中から、日本へ持ち込み禁止の肉製品や果物などを嗅ぎ分けて発見する訓練を受けた使役犬のこと。家畜の伝染病や植物の病害虫の侵入を防ぐ重要なミッションを担っています。2005年12月、成田国際空港に初めて導入されたのが始まりなのですが、キャラクターの存在は初耳でした。
「ループしてしまう」動画
まずはウワサの動画「クンくんのうた」をユーチューブで再生してみました。ボーカロイドのような音楽をバックに、ビーグル犬のアニメーションが駆け回ります。
「青いコートに身を包んでいる僕の名前はクンくん」
「肉の持ち込みは絶対にだめ」
「ハム、ベーコン、ジャーキー、ギョウザ、からあげ、ハンバーガー全部だめ」
前足でバツを作って目を吊り上げるクンくん。読者から「犬をよく知っている人でないと描けないレベル」と教えてもらった通りのクオリティーです。SNSには、「ループしてしまう」「前衛的」等、クンくんの妙な魅力に気付いた人たちの感想が並びます。
職員「どこのゆるキャラよりかわいい」
農林水産省の担当者に、クンくんのかわいさの秘密や重要な役割について教えてもらいました。
――読者から「クンくんがかわいい」という声が寄せられました。
「これまで知名度がなかったため、読者の方の目にとめていただいたことを大変嬉しく、光栄に思っております。ぜひ検疫探知犬について多くの方に知っていただき、肉製品などの輸出入には検疫が必要だということを知っていただきたいと考えております。動物検疫所の職員は、どこのゆるキャラよりかわいいと思っています」
――誕生日などキャラクター設定はありますか？
「設定はありません。プロフィールが謎につつまれた検疫探知犬クンくんをよろしくお願いします」
――動画「クンくんのうた」が味があると一部で話題です。
「アニメーションと楽曲は、美術を学んだ農林水産省の職員が制作しました。歌声の音源は、ヤマハ株式会社により開発されたVOCALOID VY1です」
――読者から「犬をよく知っている人でないと描けないレベルのかわいさ」と聞きました。
「絵の作者は超がつくほど犬好きです。キャラクターとしての可愛らしさとリアルな犬の動作を兼ね備えたクンくんを描くよう心掛けました」
「おやつのため一生懸命やっています」
――国内には何頭？
「10月1日現在、検疫探知犬はビーグル犬とラブラドールレトリバーを合わせて96頭です」
――国際空港以外ではどこ？
「国際郵便物が到着する港や、空港にある郵便局でも探知活動を行っています」
――クンくんの秘密は？
「検疫探知犬は、肉製品や果物を発見すると、ご褒美におやつをもらえます。このおやつが欲しくて、探知を一生懸命やっています。検疫探知犬にとって探知活動は楽しい宝探しゲームです」
――おやつが欲しくてとは、かわいいですね。
「検疫探知犬自身は素晴らしい能力を持っていますが、その能力を最大限発揮するために重要なのはハンドラー（検疫探知犬を扱う人）の働きです。検疫探知犬が単独で探知活動をしているわけではなく、ハンドラーと一体になって、最高のパフォーマンスが発揮されます。ハンドラーは検疫探知犬が『楽しく、集中して、安全に』探知ができるよういろいろな工夫をしています。特に旅客の大勢いる活動場所は危険がたくさんあるため、安全面への配慮がとても大事です。ときには犬を叱らなければならない場面もあります」
「ネット通販による自分用のお取り寄せであっても、海外からの肉製品は検疫が必要です。また、ほとんどの肉製品は輸入できません。お買い物の際は注意してください」
いつか気兼ねなく海外旅行ができるようになれば、空港でクンくんを探してみたくなりますね。でもクンくんはたくさんの人に声をかけられると集中力を欠いてしまうそう。手荷物検査場は写真撮影もNGです。大好きなおやつの邪魔をしないよう遠くから見守りたいですね。目印は水色のコートを着た犬です。
