野良猫が妊娠、出産した。島根県に住む米田さんは、5匹の子猫のうち2匹を引き取ることにした。もともと動物好きだが、肝臓がんを患って自宅で療養していた父親の癒しになってくれないかという思いもあった。
地域猫の子猫
2015年3月下旬、島根県に住む米田さんは、同じ町内に住む同級生の家を訪ねた。玄関先にはサバトラの野良猫がいて、同級生が「もしかして、この子、妊娠していない?」と聞いてきた。米田さんは、幼い頃から猫やうさぎ、ハムスターなどのペットと暮らしてきた。20歳の頃には、犬も飼っていた。動物が好きで詳しいのだが、サバトラの猫はお腹が大きく、乳首も張っていて、出産間近のようだった。サバトラの猫は、同級生の家の近くで暮らす野良猫で、同級生もえさを与えていた。
4月中旬、同級生が「猫を飼ってみない?」と連絡してきた。サバトラの猫が裏庭で5匹の子猫を産んだのだという。4月12日頃生まれたようだった。家族が家の中で飼うのは反対したため、裏庭にある小さな倉庫のようなところで世話をしていた。父猫も地域猫でキジトラだった。
母猫が母乳を与えて育て、目が開いてちょろちょろ歩けるようになったら、同級生がミルクでふやかしたキャットフードを与えていた。しっかり食べたので、みんなすくすく育った。
母猫のにおいがついたタオルでくるんで
同級生は、「保健所に連れて行くのもかわいそうだし、誰か飼いたいという人がいたら渡したい」と言った。
米田さんが家族に相談すると、長女がものすごく乗り気になった。当初、1匹だけもらうつもりだったが、2匹飼おうと話がふくらんでいった。5月10日、米田さんは、子猫が不安にならないように同級生に古いタオルを渡し、母猫のにおいをつけてもらった。わくわくしながらケージや猫用のベッドなどを準備した。
5月18日、長女と一緒に子猫を引き取りに行き、長女が直感で2匹選んだ。どちらも女の子だと思っていたが、女の子と男の子だった。母猫のにおいがついタオルでくるむようにして連れ帰った。他の子猫もみんな里親が決まったという。
猫を迎えて笑い声が絶えない家に
女の子をむぎちゃん、男の子をまるくんと名付けた。
2匹は猫用に準備した部屋でじゃれあって遊んでいた。
「1匹だけにすると、『待って、ひとりにしないで』と、すごく鳴いて騒ぐんです。特にむぎはニャアニャア騒ぎます。子猫の時からずっとそんな感じで、いまでもそうなんです」
米田さんの父親は、肝臓がんを患って禁煙と禁酒を医師から命じられ、とげとげしい性格になった。猫にはセラピー効果も期待していたのだが、父親はむぎちゃん、まるくんを迎えると穏やかになったという。
米田さん自身も乳がんが発覚、治療したが、むぎちゃん、まるくんのおかげで、常に前向きな気持ちで病気に向き合えたという。
「落ち込むことはなく、二匹が障子をよじ登ったため障子に穴が開き、ホラーハウスのようにボロボロになった写真を見せてもらったのですが、病室で大笑いしました」
まるくんは米田さんの父親にとてもよく懐いていた。父親が3年前に亡くなると、当分の間、まるくんは仏壇の前の座布団の上で寝ていたそうだ。
まるくんは食べることが好きで、お腹がすくと「ごは~ん」と鳴く。キャットフードを器に入れている時も、キッチンカウンターに手をかけて二足立ちしている。お腹がいっぱいになるとどこかに行って眠るという気ままな暮らしをしている。むぎちゃんはツンデレ猫なのだが、デレモードの時に米田さんの姿が見えなくなると大騒ぎをする。二匹を迎えてから、米田家は毎日笑いが絶えないという。