「弊社は社内でアイス食べて注意されるどころか、社長が焼いてくれたパンを食べてるからな……。」というツイートに注目が集まっています。「うらやましい!」というリプライが次々寄せられています。
ツイートしたのは東京創元社(新宿区)の編集者、桑野崇さん。アカウント名はtsg_kuwano(@209_500)です。
桑野さんは現在リモートワーク中ですが、原稿の受け渡しのため5月26日に出社。その際、社長が焼いてくれたパンを食べた時のツイートなのだそう。でも出版社にパン焼き機?そして社長が焼いてるってどういうこと…?どうやら、ある本が発端らしいので、まずはその担当編集者、宮澤正之さんに聞きました。
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――きっかけは一冊の本だそうですね。
宮澤さん「はい、2019年の4月に弊社が刊行した『ロイスと歌うパン種』という小説です」
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「ロイスと歌うパン種」ロビン・スローン著/島村 浩子訳
舞台は米国サンフランシスコ。巨大ベンチャーで働き始め、激務にお疲れ気味の駆け出しプログラマーのヒロイン・ロイス。そこに信じられないくらい美味しいパンとスープが名物の宅配レストランを営む移民の兄弟が現れる。ふたりは一族の宝『歌うパン種』を残して去っていくが…。「とにかくロイスの焼くパンがやたら美味しそうで、読んでいるとお腹が空いてくる」(宮澤さん)
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――この本を読んで、社内にパンのブームが来たと。
宮澤さん「はい。そうこうするうち社長が、ロイスのある行動に触発されて、家にあるホームベーカリーを持ってきて社内で焼くことに。焼きたてのパンが思いのほか好評で、ここ一年くらいときどき焼いてくれるようになりました」
「ロイスと同じように、始業前の朝早くに社長がパン種を仕込み、発酵させ、お昼前には焼き上がります。それを一口サイズに切って、大皿に並べて皆、好きなように食べています。ハチミツやちょっと高級なバターや社員手づくりのジャムなども持ち寄るようになりました」
――パン焼きの腕前は。
「上がってきています(笑)。外の皮はやや固めで、中はしっとりふんわりです。牛乳、生クリーム、バターを入れて作るものやトマトジュースを加えたり、ココアブレッドにしたり。バリエーションも豊かです」
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続いてツイートをした桑野さんにもお話を聞きました。
――ツイートした時の状況は。
桑野さん「少し前に『会社の休憩時間にアイスを食べていたら注意された』というネットニュースを読んでいて、会社の文化はそれぞれだなあ、弊社はおおらかだなあ、という気持ちからのツイートでした」
――SNSで注目されました。
「皆さん食に関する話題は好きなんだな…と。以前、ホームベーカリーを導入して間もない時期にも一度バズったので、またこうして話題になって驚きました。弊社ではすっかり日常の一コマとなっています」
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ところで、作者のスローンさんは昨年5月にプライベートで来日。その際、「作品にインスパイアされて社内では自家製パンを焼いている、と話すと大受けしてくれました」(宮澤さん)とのことです。