普段から社会的に弱い立場にあり、今回の新型コロナウイルス感染拡大で失業や貧困、虐待などの深刻な影響を受けている人たちを支援する基金が、兵庫県で誕生した。公益財団法人ひょうごコミュニティ財団が中心となり、県内の市民活動団体などが実行委員会を組織。企業や団体、個人から寄付を募り、支援活動に取り組む団体などに助成することで支え合いの輪を広げていく。
関係者は、子供や女性、障害者、外国人、高齢者らが現在置かれている状況を問題視。「コロナ禍は全ての人に甚大な影響を及ぼしているが、とりわけ普段から弱い立場にいる人たちへのしわ寄せが大きくなっている」として基金を設立。「コロナから始まる共助社会」を目指し、「ひょうご・みんなで支え合い基金」と名づけた。
寄付金は新型コロナウイルスの影響で困窮している人への支援活動に対して、助成金として活用する。支援活動の主体は、市民活動団体やボランティア団体、NPO、NGOなどを想定しており、法人格の有無は問わない。また現在コロナ禍で支援活動ができなくなっている団体の新たな支援手法の開発なども対象とする。
5月30日にはオンラインでキックオフミーティングがあり、関係者ら約70人が参加。支援団体の事例報告などを通じ、現場の課題や今後の方針などを共有した。
勉強が苦手な子供や外国人の子供らを支援する特例認定NPO法人「まなびと」(神戸市)の理事長中山迅一さんは、休校中の子供の面倒を見る家庭の大変さを指摘し、コロナ禍の長期化を懸念。日本で暮らす外国人が、仕事が休みになったことで日本人と関わる機会が減り、孤立を深めているケースが増えていることなども紹介した。
NPO法人「フードバンクはりま」(姫路市)理事長の辻本美波さんは、毎日の食事に困窮している人たち、特に母子家庭が直面している厳しい現実などについて話した。他にも、中国・武漢を支援する海外ボランティアの取り組みや、コロナ関連の情報収集に苦労する障害者の事例、非正規の仕事を失ったシングルマザーの多くが貧困状態に追い込まれている報告などがあった。
阪神・淡路大震災を機に生まれ、被災地で脈々と受け継がれてきた市民活動。今回のコロナ禍を「災害」の一種ととらえ、支援が必要な人たちのリサーチを進めていく。実行委員会のひとりで兵庫県立大学大学院・減災復興政策研究科の青田良介教授は「25年前の震災の教訓から、兵庫には“官”に全て任せるのではなく、“民”が足りない部分をフォローしていく考え方が根づいている。この基金が市民の役割を再認識するきっかけになり、それぞれの活動を自然に支え合う輪がもっと広がってほしい」と話した。
実行委によると、第1次助成は6月中に数百万円規模の実施を目標とする。緊急性の高い活動から、迅速性を重視。第2次以降も状況を見ながら対象を拡大していくという。
■ひょうご・みんなで支え合い基金