9月入学の米国、日本とは大きく異なる「入試システム」…現地の日本人母が知ったカリキュラムの違い

谷口 輝世子 谷口 輝世子
安倍晋三首相(提供・共同通信社)
安倍晋三首相(提供・共同通信社)

安倍晋三首相は新型コロナウイルスとの戦いが長期戦になると国民にさらなる感染対策の必要性を発信。それと並行して学校の長期休校で浮上した「9月入学」がいま積極的に議論されている。全国知事会で議題に上がったほか、国も慎重に検討作業に入った。9月入学を導入している米国(ミシガン州)に2001年に移住し、結婚、出産、子育てを経験した当サイトの通信員が米国のカリキュラムについて体験をもとにふりかえった。

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米国では州や学校によって違いがあるもが、おおむね9月から新学年がスタートし、6月ごろには、その年度を終了するというスケジュールだ。入学年齢も州によって違いはある。筆者の住む米ミシガン州では、9月1日かそれ以前に満5才になった子どもが、小学校1年生の1年下であるキンダーガーテン(日本の幼稚園年長)クラスに入り、9月1日かそれ以前に満6才になった子どもが小学1年生に進級する。

9月入学の米国、4月入学の日本という現行下では、米国の4月2日から9月1日生まれの子どもは、日本の同じ誕生日の子どもよりも、半年あまり早く小学1年生になる。逆に米国の9月2日から4月1日生まれの子どもは、日本の同じ誕生日の子ども半年近く遅れて1年生になる。このまま学年が上がっていくと、米国の4月2日から9月1日生まれの子どもは、日本の同じ誕生日の子どもよりも半年以上早く高校、大学を卒業する。逆に米国の9月2日から4月1日生まれは、日本の同じ誕生日の子どもよりも遅れて高校、大学を卒業することになる。(ただし、米国では保護者の判断によって、まだ、学校で学ぶ準備ができていないという理由で、就学を1年遅らせる子どもも珍しくない)

夏休み、冬休み、春休みはどのようになっているのか。筆者の住む学校区は小学校と中学校は3学期制だ。しかし、日本のように学期が終了するごとに夏休み、冬休み、春休みがくるわけではない。最初の学期は前述したように9月に始まり、11月末に終わる。その後、1週間弱の米国の感謝祭休暇を挟んで、第2学期が始まる。第2学期の途中に1週間程度の年末年始休暇と3日程度の冬休みがある。第2学期は3月半ばに終了し、第3学期が始まった後で、4月のはじめに1週間の春休みが挟まっている。

州や学校区によっては、春休みが終わって第3学期が始まるようになっているところもあるが、日本のように2学期が終わるとクリスマスとお正月のある冬休みに入る、というわけではない。日本で生まれ育った者からすると、ややメリハリに欠ける。筆者の住んでいる学校区の高校は前後期制で、9月から翌年1月までと、1月途中から6月半ばまで。前期と後期の終わりにテストが行われる。

6月中旬からは夏休みが始まる。学年が終了していることに加えて、2カ月以上と長いこともあり、解放感にあふれている。小中高生は、9月までに読んでおくべき読書リストなどは配布されるものの、ワークブック、日記のような宿題を与えられないのが普通だ。

しかし、ぼんやりと過ごしていては、他の子どもに遅れを取るという保護者の不安は米国でも同じだ。共働きの家庭が多く、子どもだけで留守番させられないという事情もあって、子どもたちは託児を兼ねた日帰りのサマーキャンプで自然と触れ合ったり、科学教室のようなもの、スポーツの練習に通う。大学生たちは就職につなげるため、夏休みには、インターンとして働いていることも多い。

気になるのは入学試験。日本でも9月入学になれば、入試の時期も変わるだろう。これまでは真冬にテストを受けており、大雪などで時間通りにテストを受けられないこともあった。米国では9月始まりなので、春に大学入試テストを受けているのかというと、そういうわけでもない。入試のシステムが違うからだ。

高3生に相当する米国の12年生は、11年生の頃から大学進学適正試験を複数回受験し、これの最高得点と、高校の学業成績、小論文、アピールできる活動などを大学に提出して合否判定を待つ。高校の最終学年が始まって間もない11月ごろから願書提出をしはじめ、年末から年明けの3月ごろにかけて結果を受け取る。ちなみに大学生は卒業後の6月ごろから、仕事をスタートすることが多い。

仮に、日本で9月始まりが導入されても、米国とは教育環境や入試システムが違う面もあるので、アメリカのやり方を単純にコピーして済ませるというわけにはいかない。誕生日による学年の区切りをどうするかという問題もある。日本の高3生は、米国の大学に留学しやすくなるかもしれないが、日本の大学に進学するクラスメートとは、前述したようなことから、入試準備のスケジュールは違ってくるだろう。

ただでさえ先の見えない日が続く。急激な変化で取り残される子どもたちが出ないように切に願う。

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