品薄のマスク 勝手に送り付け→高額請求する詐欺多発 安倍首相「布マスク配布」表明も拍車の恐れ

多田 文明 多田 文明

 いまだにマスクは品薄の状況です。感染予防のためにマスクを買い求める需要に供給は追いついておらず、お店の棚はいつもカラっぽです。こうした中で、マスクを勝手に送り付ける手口が出ています。

 3月に女性宅へ届いた荷物を家族が8500円を払って受け取ると、50枚のマスクが入ったそうです。しかし誰も注文していない商品でした。これは商品と引き換えにお金を払う代金引換を使った悪質な手口で、家族の誰かが注文したかもしれないと思わせて、お金を払わせます。これまではカニなどの生鮮食料品を送り付けことが多かったですが、そこにマスクを加えてきました。荷物には送り先の記載はありますが、電話をかけても通じず、お金を取り戻すのが極めて難しいケースも多いのです。

 また1万円を超える値段で「マスクを代金引換で送ります」という内容のメールが送られてくることもあります。男性が注文をしていない旨を返信したところ「断っても、代金を請求する」などと連絡してきたそうです。こうした「マスクを入荷したので、代引きで発送する」といったメールは全国各地に送られてきており、商品を引き取らない場合でも、「代引きの手数料や送料」などは支払ってもらうと書かれています。これは詐欺の事前電話であるアポ電(アポイント電話)ならぬ、アポメールだといってもよいでしょう。

 これまでの生鮮食料品などの送り付けを見ても、悪徳業者はまず「ご注文していた商品を送ります」と電話をかけてから、代引きや請求書入りの商品を送ってきています。これは事前に相手の住所確認をするための探り電話です。もし商品を送り付けても宛先が不明だった場合、郵送代が無駄になるからです。先のメールの後半部には「注文した覚えがない場合には、メールで返信してほしい」と書かれています。おそらく返信時に確認と称して住所などを聞き出そうとしてくるかと思います。送り付けの被害を受けないためには、こうしたアポメールには返信せず、無視することが大事になります。

マスク転売禁止が影響 悪徳業者が詐欺に進出

 マスクの送り付けが発生した時に「やはり」と思いました。というのも、生活安定緊急措置法によりマスクなどの転売が禁止されており、在庫品が余ってしまった悪徳業者がこの手に出てくる可能性があったからです。

 昨年、平成から令和への改元に乗じて「平成最後の記念に」と電話をかけて、高齢者に皇室関連の写真集などを勝手に送り付ける手口がありました。この時は商品が天皇陛下絡みのものという、高齢者にとって断りづらいものを送ってきたために被害が出ました。最近では、消毒用ジェルが送り付けられてくることもありますが、マスクにしても、品薄で私たちがほしいと思っているものなので、つい受け取ってしまいがちなのです。だましはそうした心理に付け入ってきます。

 もし商品が届いて、そこに請求書が入っていても、自分が注文したものでない場合は、商品の受け取りから14日間を過ぎれば、商品を自由に処分してもよいことになっています。もちろん、代金を払わなくても大丈夫です。ただし、代金引換のようにお金を払ってしまうと返金は難しくなることが多いので、この場合は必ず家族の誰かが注文したのかを確認してから、受け取りましょう。

 安倍首相は今月に入り、マスクを全世帯に2枚を配ることを表明しましたが、送り付け商法などの悪徳商法や詐欺をするための好機を与えてしまったような気もします。しっかりと、配布にあたって「お金はかからない」ことや、郵送する前に「住所や家族構成を確認させてくださいという不審電話も考えられる」といった注意も合わせて行わないと、何かしらの詐欺被害を引き起こす可能性があります。

 また、マスクがほしかった人は商品が送り付けられてきてもラッキーと考えるかもしれませんが、本当にマスクが入っているとは限りません。中には粗悪な代物や別な商品が入っているかもしれません。以前に、カニが勝手に送られてお金を払って開けてみたら、すかすかのカニで料金にとても見合わない粗悪なものだったということもありますから。

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