赤白メットに桜のエンブレム「けいらマン」の正体は... 心優しきヒーロー、子どもたちに交通安全を説く

京都新聞社 京都新聞社

 白と赤色のヘルメット、胸に金色の桜のエンブレムが輝く。昨年12月初旬、愛東あいあい幼稚園(東近江市妹町)で開かれた交通安全教室の寸劇に登場したのはヒーロー「けいらマン」だ。

 約20分間の劇は、子どもにチャイルドシートをつけさせないように誘惑する悪役を退治するストーリー。「チャイルドシートは命を守るベルトなんだ」。園児と保護者計約70人に呼び掛け、壇上をさっそうと去った。

 ヒーローの正体は東近江署玉緒駐在所(同市大森町)の巡査長、伊藤裕次郎さん(37)。地域の「おまわりさん」だ。同署の駐在所に勤務する署員3人でつくる寸劇グループ「伊藤劇団」で、2015年からけいらマンを担当している。市内の幼稚園や保育園でほぼ毎月公演し、信号横断のルール順守やシートベルトの大切さを訴えてきた。

 誕生のきっかけは市内の幼稚園の園長から「シートベルトを締めない子がいる」と聞いたこと。伊藤劇団では主に高齢者向けに特殊詐欺の防止をテーマにした寸劇を披露し、好評を得てきた。子どもたちにも「ヒーローの言うことなら簡単に聞いてくれるに違いないと思った」と振り返る。

 衣装や小道具は自作。バイク用のヘルメットに色を塗り、百均ショップで買ったLEDライトを貼り付けた。「やるからにはちゃんとしたい」と、BGMにもこだわる。コミカルな効果音も使い、会場の笑いを誘うことも忘れない。

 大学2年時に交通事故で友人を亡くした。悲しみに暮れる友人の両親を見て、「二度とこんな思いを誰にもさせたくない」と誓い、警察官を志した。けいらマンにこめる思いも変わらない。「子どもたちや親御さんの心がけで救える命がある。僕たちの劇がそのきっかけになってほしい」

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