「科学よもやま話=10=」
最近、全固体電池という言葉を新聞や雑誌などで見たことがないでしょうか?全固体電池には、いくつか種類がありますが、全固体電池といえばリチウムイオン電池を指すことが大半です。電池は通常、プラス極、マイナス極の材料が固体で、これにイオンを動かす液体を入れて作られますが、イオンを動かすものを固体にすると全固体電池になります。
すべて固体にして何がええねん?ということですが、いろいろあります。わかりやすいのが安全性ですね。海外で電池が爆発したという記事をたまに見ますが、全固体電池にしますとイオンを動かすための可燃性な油を使う必要がありませんので、非常に安全になります。とはいえ、電池はエネルギーのかたまりですので、あまりにもむちゃな使い方をすると、いくら全固体電池といえども、多少危険な電池になってしまいます。
さて、全固体リチウムイオン電池の開発の歴史は結構古く、40年ほど前から始まっています。なにが難しいかと言えば、イオンを動かす固体の開発です。“お塩”を考えてみます。塩はナトリウムと塩素から主に出来ていますよね。これを水に溶かすと、ナトリウムイオンと塩化物イオンとに分かれて、ナトリウムイオンは水の中を動き回ることができます。
では、固体の塩の中ではどうでしょう?固体の塩の中でもナトリウムイオンは動くことができますが、その動きは大変遅くなります。
普通は、固体の中のイオンはあまり早く動くことができないのですが、最近10年で、リチウムイオンが無茶苦茶早く動くことができる固体の材料が、主に東京工業大学と大阪府立大学のグループにより合成されています。それ以降、全固体電池の開発が盛り上がっています。原理的には急速充電も可能ですので、電気自動車用電池として非常に期待されています。
いまのスマホに入っているリチウムイオン電池のように幅広く普及するには、まだ課題がありますが、今後楽しみな電池ですね。1900年ごろにエジソンも電気自動車を普及させるために、安価で性能の良い電池開発を目指していましたが、全固体電池をみたら、驚くでしょうねえ。